香港越境取引規制の新たな波が、3.2兆円規模の資産を直撃するかもしれない。中国証券監督管理委員会(CSRC)が打ち出した越境株式取引への締め付けを受け、中国最大手の証券会社・中信証券は「最大320億ドルの香港資産に影響が及ぶ」と試算した。Bloombergが5月25日に報じた。

中信証券が弾き出した3.2兆円という数字

今回のCSRCの規制は、香港を経由した越境取引ルートの監視強化を目的としたものとみられている。具体的な対象や手口の詳細はまだ限定的にしか開示されていないが、中信証券の試算が示す規模感は重い。320億ドルといえば、東京証券取引所プライム市場の一日の売買代金を軽く上回る水準だ。

「越境株式取引に対する中国の最新の取り締まりは、香港資産への統制強化を目的としており、最大320億ドルの保有資産に影響を及ぼす可能性がある」──中信証券(Bloomberg報道より)

影響を受けるのは、ストックコネクト(沪深港通)などの合法的な相互接続スキームを活用していた投資家だけではないらしい。当局が「グレーゾーン」と判断した取引ルートも一括して対象になる可能性があり、外国人投資家にとっては想定外の網がかかる懸念も出てきた。

香港が「窓口」でなくなる日は来るか

一国二制度が形骸化して久しいと言われて久しいが、今回の措置はその流れをさらに加速させる性格を持っている。これまで香港は、外国資本が中国本土市場へアクセスするための事実上の玄関口として機能してきた。国際会計基準、英語の法的文書、相対的に自由な資本移動——そういった要素が積み重なって「アジアの金融ハブ」の看板を支えてきたわけだ。

ただ、CSRCが狙うのは資本流出の封鎖だけでなく、監視の届かない「抜け穴」を体系的に塞ぐことでもあるらしい。制度を壊しているというより、制度を自分たちの管理下に完全に取り込もうとしている、という見方のほうが実態に近いかもしれない。香港市場の機能は残るが、北京が全ての蛇口を握る、という絵柄が徐々に鮮明になっている。

この先どうなる

中信証券の試算はあくまで上限値であり、規制の細則次第で実際の影響額は変わってくる。注目すべきは、今後CSRCが公表する詳細なガイドラインと、ストックコネクトへの適用範囲だ。もし南向き取引(香港から本土への投資)に加えて北向き取引(本土から香港への投資)にも制限が波及するようなら、外国人投資家の撤退判断が加速する可能性がある。一国二制度 金融ハブとしての香港の信認が試されるのは、ルールが出揃ってからが本番だろう。