ロシアのキエフ攻撃が新たな段階に入ったかもしれない。ロシア外務省が6月、キエフに滞在する全外交官と外国人に「できるだけ早く退避せよ」と要求した。次の攻撃目標として名指しされたのは「意思決定中枢と司令部」、そしてドローン製造施設。単なる威嚇ではなく、ピンポイントで何を狙うかまで公言している点が引っかかった。

土曜夜の攻撃で4人死亡、子ども3人を含む24人を出した先例

直近の被害から振り返ると、今月初頭に5月の短期停戦が失効した直後、ロシアはキエフの集合住宅を直撃。子ども3人を含む24人が死亡した。そして今週土曜夜の攻撃でも新たに4人が死亡、約100人が負傷したとゼレンスキー大統領が確認している。短期停戦が終わってからというもの、攻撃の頻度と規模が一段階上がったような印象を受ける。

ロシア側は今回の報復の口実として、ルハンスク州スタロビルスクにある学生寮への攻撃を挙げ、「21人が死亡した」と主張している。一方、ウクライナ軍は「標的はロシアのエリートドローン部隊であり、民間人を狙ったわけではない」と反論。双方の言い分がまったく噛み合わないまま、攻撃の連鎖が続いているのが現状だ。

「モスクワはキエフにいる外国人と外交官に『できるだけ早く』退避するよう求め、市民に対しても行政・軍事施設に近づかないよう警告した。」(BBC News / Reuters)

外交官退避命令はそれ自体が外交的メッセージを兼ねている。大使館員を引き上げさせることで「次の攻撃で民間外交拠点が巻き添えになっても責任は取らない」という宣言にもなる。過去の紛争事例でも、この種の通告が大規模攻撃の48〜72時間前に出ることが多く、国際社会が最も警戒するシグナルとして認識されているのはそのためだ。

外交官退避命令とドローン製造施設が示す「標的の変化」

注目したいのは、ロシアが今回ドローン製造施設を明確に標的に挙げたことだ。ウクライナはドローン戦で独自の優位を築きつつあり、長距離攻撃能力の向上がロシア側を苛立たせている背景がある。軍事インフラだけでなく「生産拠点そのもの」を潰しにいく戦略は、戦争の性格が変わりつつあることを示唆しているようにも見える。

また、外交官退避命令は在キエフ大使館を持つ各国政府にとっても判断を迫られる局面だ。退避に応じれば事実上ロシアの警告を受け入れることになるし、残留を選べばスタッフの安全リスクを負う。欧米各国がどう動くかは、今後の外交的圧力の強さにも直結してくるだろう。

この先どうなる

ロシアの予告通り「システマティックな攻撃」が実行されれば、キエフの民間インフラへの被害はさらに拡大する可能性が高い。外交官退避命令が出た後、欧米各国が在ウクライナ大使館員の安否確認や一時退避を始めるかどうかが当面の注視点になる。それが実際に動けば、外交的孤立という圧力がウクライナにもかかってくる。一方、ウクライナ側はドローン攻撃の手を緩める気配がなく、報復の連鎖は当分収まらなさそうだ。停戦交渉の糸口は今のところ見えない。