ホルムズ海峡再開に向けた合意が、水面下で動いていた。米政府当局者が明らかにしたところによると、米国とイランは海峡の航行再開と高濃縮ウランの廃棄について「原則合意」に達したとされる——ただし、ここが肝心で、正式な署名はまだ行われていない。
世界の原油2割を握る海峡、封鎖解除でどこが動く
ホルムズ海峡は、サウジアラビア・イラク・UAE・クウェートの原油が通過する事実上の一本道で、世界の海上原油輸送量の約20%がここを経由している。封鎖が続いた期間、原油市場は神経質な値動きを続けており、欧州のインフレ圧力もこの「詰まり」と無縁ではなかった。
仮に航行が正式に再開されれば、市場が最初に反応するのはブレント原油の先物価格だろう。産油国の輸出コストが下がり、夏場の燃料需要期に向けてタイミングが重なれば、値下がり幅はそれなりのものになりうる。
「当局者は、双方がホルムズ海峡の再開とイランによる高濃縮ウランの廃棄について原則合意したと述べたが、協定はまだ署名されていないと強調した。」(The New York Times, 2026年5月24日)
もう一方の柱、高濃縮ウランの廃棄はさらに重い意味を持つ。イランが保有するとされる高濃縮ウランは、核兵器1発分の製造に必要な量をすでに超えているとIAEAが警告してきた経緯がある。それを物理的に廃棄するなら、核開発能力を実質的に後退させる、ここ数十年でも前例のない一手になりうるわけだ。
「原則合意」が何度も崩れてきた、この交渉の履歴
とはいえ、「原則合意」という言葉には注意が必要で、米イランの核をめぐる交渉はこれまで何度も同じ段階で止まってきた歴史がある。2015年のJCPOA(核合意)ですら、最終署名まで土壇場の修正が続いたし、トランプ政権の離脱後に再開されたウィーン協議も、実質的な合意を見ないまま長期化した。
今回の焦点は大きく二つ。ひとつは革命防衛隊の扱いで、制裁リストから外すかどうかで米国内の反発は強い。もうひとつは制裁解除の範囲と順序で、イラン側は「ウラン廃棄が先か、制裁解除が先か」の順番に強くこだわる傾向がある。この二点が詰まらなければ、原則合意は原則のまま終わる可能性も十分にある。
この先どうなる
米政府当局者は「最終的な詰めに数日を要する」と述べており、週内の署名を想定したタイムラインが動いているらしい。ただ、外交交渉は最後の数日で最もひっくり返りやすい。革命防衛隊の扱いと制裁解除の範囲が折り合えば、米イラン核合意として歴史に残る合意になるし、折り合わなければまた「原則だけ」で終わる。市場は署名の瞬間まで確定的な動きを控えるだろうし、欧州各国もその瞬間を待ちながら次の一手を温めているはずだ。ホルムズ海峡再開が現実になるかどうか、数日以内に答えが出る。