米イラン核交渉をめぐり、トランプがTruth Socialに投稿した一文がいま、外交関係者の間で飛び交っている。「イラン・イスラム共和国との交渉は順調に進んでいる」——たった一行だが、第5回協議が「僅かな前進」と評される直後のタイミングで、大統領自らが楽観論を打ち出した意味は軽くない。

トランプ投稿の舞台裏——第5回協議で何があったのか

5回を重ねた米イラン協議。積み重なってきた論点の核心は、ウラン濃縮の上限をどこに設定するか、そして制裁解除をどのタイミングで連動させるかという2点に絞られてきた。イラン側は高濃縮ウランの保有継続に固執し、米側は「濃縮ゼロ」を理想としながらも現実路線へのシフトを探っている——そんな綱引きの中で今回のトランプ投稿が出た。

外交筋から見れば、これはトップダウンで「合意ムード」を演出し、イラン国内の強硬派を揺さぶる政治的シグナルとも読める。交渉が行き詰まったとき、首脳が公開で「うまくいっている」と言い切ることで相手を動かす——トランプが北朝鮮や中国との交渉でも使ってきた手法に近い。

「イラン・イスラム共和国との交渉は順調に進んでいる!それは偉大な合意のみとなるだろう」
— Donald J. Trump(Truth Social, 2025年)

ただし、その投稿には条件も期限も相手国の同意も一切書かれていない。「大型合意」という言葉だけが宙に浮いている状態で、イラン外務省からの公式な応答も出ていない。

合意が成立すれば原油はどう動くか——イラン制裁解除のインパクト

イラン制裁解除が現実になれば、市場への影響はまず原油から出る。イランは日量300万バレル超の生産能力を持ち、制裁下でその相当部分が表の市場に出回っていない。仮に供給が本格回帰すれば、OPECプラスの減産戦略と正面からぶつかることになる。

ドルへの影響も無視できない。制裁解除に伴う取引通貨の問題は、米ドル基軸体制と中東産油国の関係を再び揺さぶる可能性がある。さらにイスラエルはイランの核能力保持を安全保障上の「レッドライン」と位置づけており、合意内容によってはネタニヤフ政権との亀裂が表面化するシナリオも消えていない。

トランプ中東外交の文脈で言えば、第1期政権でのJCPOA(イラン核合意)離脱から7年。その本人が今度は「偉大な合意」を目指しているわけで、外交のアイロニーとしてかなり鮮烈な絵になっている。

この先どうなる

次の焦点は第6回協議の有無と、イラン最高指導者ハメネイ師の発言だろう。ロウハニ路線の穏健派が内部でどれだけ発言力を持てるかが、交渉の速度を左右する。トランプは「大型合意のみ」と言い切ったが、それは裏を返せば「小さな合意は受け入れない」という圧力でもあって、交渉が再び硬直するリスクも同時にはらんでいる。原油市場はすでに値動きに神経を尖らせており、次の一手が出るたびにボラティリティが高まる展開は続きそうだ。