オレシュニクが、また飛んだ。5月25日未明、ロシアはウクライナの首都キーウへ中距離弾道ミサイル「オレシュニク」を発射。ニューヨーク・タイムズが報じたこの攻撃は、今次戦争で3発目の使用記録となった。キーウ市内では建物が数時間にわたって激しく揺れ続けたという。
3発目が意味する重さ——「希少兵器」をなぜ今、投入したのか
オレシュニクは超音速で飛翔し、現在配備されている防空システムによる迎撃が極めて難しいとされる新型兵器だ。ロシアが昨年から実戦投入を始めたこのミサイル、累計使用数がわずか3発という事実は、それがいかに「切り札寄り」の扱いを受けているかを示している。
では、なぜこのタイミングか。停戦協議をめぐる外交的駆け引きが続く中、ロシアがキーウ直撃という象徴的な攻撃を選んだのは偶然じゃないだろう。ウクライナを支援する欧米諸国に対して「防空の壁を突き破れる」と見せつけることで、交渉テーブルでの圧力を高める——そういう計算が透けて見える。
「ロシアは戦争中で3度目となるオレシュニク中距離弾道ミサイルの発射を行った。」(ニューヨーク・タイムズ)
首都を狙うキーウ攻撃の心理的インパクトは、前線への打撃とはまた別の次元にある。市民の恐怖と政府への圧力を同時に高める、いわば「首都直撃」という選択の重みは、欧米メディアを通じて世界中に瞬時に伝わった。
既存の防空が通じない——ウクライナと支援国が直面する技術的壁
オレシュニクの最大の特徴は、その飛翔速度と機動性にある。既存のパトリオットシステムでの迎撃は「極めて困難」とされており、これはウクライナ側だけでなく、NATO諸国が提供してきた防空アーキテクチャ全体への問いかけでもある。
3発という少ない使用実績が逆に「温存されている」という緊張感を生んでいて、いつどこに飛んでくるかわからない状態が続く。心理的な抑止効果という面では、1000発の通常ミサイルより計算が難しい兵器かもしれない。
この先どうなる
停戦交渉が本格化するか否かの瀬戸際で、ロシアがオレシュニクを再び使ったという事実は、今後の攻撃頻度にも影響を与えそうだ。使用実績が3発から積み上がっていくにつれ、希少性によるインパクトは薄れる一方、対応策のない「日常的脅威」になりかねない。欧米側がどこまでの防空支援を積み増すか、そしてウクライナが交渉路線に傾くかどうか——この二択が、次の局面を決める分岐点になるだろう。