LNG価格高騰の引き金が、今まさに二本同時に引かれようとしている。ホルムズ海峡という「世界の喉元」が封鎖リスクにさらされ、そこへエルニーニョが生み出した記録的猛暑が追い打ちをかける。供給が細り、需要が膨らむ。この組み合わせはエネルギー市場にとってほぼ最悪のシナリオと言っていい。

世界のLNG輸送量20%が通る海峡で今、何が起きているか

ホルムズ海峡は中東産LNGの大動脈で、世界全体の輸送量のおよそ20%がここを経由する。カタールやUAEから欧州・アジアへ向かうタンカーが毎日行き交うこの海峡に、地政学的緊張が高まっているのはご存じの通り。封鎖が現実になれば、代替ルートへの切り替えは容易ではなく、スポット市場への供給量が一気に絞られることになる。調べてみると、この海峡を迂回するルートは喜望峰経由となり、輸送コストと日数が大幅に跳ね上がる。つまり「封鎖」という最悪事態を待つまでもなく、リスクが意識されるだけで価格に上昇圧力がかかりやすい構図になっている。

「焼けつくようなアジアの夏が、ガス価格急騰リスクをさらに高める」——Bloomberg

そこへ気象現象が追い打ちをかけた。エルニーニョの影響でインド・中国・東南アジアの夏は想定を超える高温で推移しており、冷房需要に伴うLNG消費が急増している。特に電力需要のピークが重なる6〜8月は、アジア向けスポット価格が跳ね上がるリスクが高いと複数のアナリストが指摘している。

日本が「二重苦」から逃げられない理由

ホルムズ海峡封鎖リスクとエルニーニョ猛暑という二つの圧力が同時にかかる中で、日本は特に無防備な立場に置かれているらしい。日本のLNG輸入はカタールやUAEへの依存度が高く、ホルムズ経由の割合が大きい。加えて国内の再エネ比率がまだ限定的なため、電力需給のタイトな夏にLNG火力への依存が高まる傾向がある。スポット価格が急騰すれば、電力料金の上昇を通じて食品・製造業のコストに波及するまでの時間は、それほどかからないんじゃないかと感じる。2022年のウクライナ侵攻後のエネルギー価格高騰が物価全体を押し上げたあの局面と、ルートは違えど構図は似ている。

この先どうなる

最も注目すべきは夏のピーク需要期(7〜8月)に向けた在庫水準と、ホルムズをめぐる外交交渉の動向だろう。アジアの主要バイヤーが代替供給源として米国産LNG(サビンパス等)の追加調達に動いており、米国産のスポット価格にも上昇圧力がかかりはじめている。地政学リスクが落ち着けば過剰反応との見方もあるが、エルニーニョ由来の猛暑は少なくとも今夏いっぱいは続く見通しで、需要側の圧力は簡単には消えない。日本のエネルギー調達担当者にとっては、「まだ大丈夫」と言える材料が今のところ見当たらない夏になりそうだ。