イラン核協議の第6回会合が、カタールの首都ドーハで幕を開けた——にもかかわらず、誰も「もうすぐ決まる」とは言っていない。イランの首席交渉官団がドーハ入りした直後、ニューヨーク・タイムズは米・イラン双方の当局者筋の話として、今回も合意には程遠いとの見通しを伝えた。
カタールが仲介、それでも動かない濃縮ウラン問題
今回の枠組みでカタールが仲介役を担っているのは、米・イラン間に直接の外交チャンネルが存在しないからだ。パキスタンも関与する多国間の構図で、外側から見ると「国際社会が動いている」印象を与える。ただし、交渉の核心にある濃縮ウランの扱いは依然として平行線のまま。
イラン側が主張するのは「民生用の濃縮権は譲れない」という立場で、対する米側は「濃縮能力そのものの放棄」を求めているとされる。この溝は2015年のJCPOA(イラン核合意)交渉当時から繰り返されてきた構図で、7年経っても変わっていないわけだ。
「米国とイランの双方が、突破口はまだ間近ではないと示唆した。」(The New York Times, 2026年5月25日)
カタール仲介という形式は整っているが、形式と中身の乖離がここまで大きいと、「場を作ること自体がゴール」になっていないかという疑問が浮かぶ。
トランプの「前進あり」と「難しい」、どちらが本音か
さらに厄介なのがトランプ大統領自身の発言の揺れだ。ある場面では「交渉は前進している」と強調し、別の機会には「非常に難しい」と打ち明ける。どちらが本音なのか、ホワイトハウス内部でさえ統一見解が出ていないらしい。
トランプ・イラン交渉の文脈でこの矛盾発言を読むと、二つの解釈が浮かぶ。ひとつは、交渉相手へのプレッシャーを維持するための意図的なあいまい戦術。もうひとつは、大統領本人が情勢をリアルタイムで読み切れておらず、発言がその都度ブレているケース。どちらが正しいかは今の段階では判断できない。
ただし、どちらの解釈が正しいにせよ、こうした矛盾シグナルがイラン側の交渉チームを慎重にさせている可能性は高い。「合意しても覆される」という2018年のJCPOA離脱のトラウマは、イラン側の交渉官たちの頭から消えていないはずだから。
この先どうなる
第6回会合でも合意が遠ければ、次の焦点は「第7回を開くかどうか」の判断になる。イランの国内政治では強硬派が「交渉そのものが譲歩のシグナル」と批判しており、ロウハニ路線的な対話路線を長く続けることには政治コストがある。米側も中間選挙サイクルや対イスラエル関係を抱える。カタール仲介という外枠は維持されそうだが、濃縮ウランという核心部分で何らかの「創造的な言い回し」が生まれない限り、交渉は第7回、第8回と数だけ積み重なっていく展開も十分ありうる。結局のところ、突破口は交渉テーブルではなく、どちらかの国内政治が動いたときに開くものかもしれない。