北朝鮮ミサイル発射が短時間で連続して確認された——それも複数機が同時に、日本海へ向けて。韓国合同参謀本部と日本の防衛省が相次いで警戒を発令し、ソウル・東京・ワシントンが足並みをそろえて非難声明を出すまでに、さほど時間はかからなかった。
「複数同時」に込められた北朝鮮の計算
今回の発射で注目されるのは、1発ではなく「複数を同時に」という点だった。軍事専門家の間では、これが迎撃システムを飽和させる戦術の訓練である可能性が指摘されている。ミサイルは日本の排他的経済水域の外に着弾したと報じられており、直接的な被害は確認されていないものの、抑止力の誇示としてのメッセージは明確だったんじゃないか、という見方が強い。
タイミングも偶然ではないらしい。発射は米韓合同軍事演習の実施期間と重なっており、北朝鮮はこうした演習を「侵略の予行演習」と繰り返し位置づけてきた経緯がある。軍事演習→ミサイル発射という連鎖は、過去にも繰り返されたパターンで、今回もその文脈の上にある。
「韓国・日本の軍当局によると、北朝鮮は日本海に向けて複数の弾道ミサイルを発射した。ソウル、東京、ワシントンは即座に非難声明を発した。」(The Associated Press)
日本海への弾道ミサイル発射が繰り返されるたびに、国際社会の反応も「声明→協議→制裁議論」という定型をたどりがちだった。今回も国連安全保障理事会での緊急協議が呼びかけられたが、常任理事国である中国・ロシアが拒否権を持つ構造は変わっていない。制裁強化論が出るたびに頭打ちになるあの壁だ。
年々「精度」より「数」を増やす北朝鮮の戦略転換
北朝鮮の弾道ミサイル技術は、単なる射程延伸から「複数同時・多様化」へとシフトしてきた印象がある。極超音速滑空体、固体燃料型ICBM、短距離弾道ミサイルと種類を増やしながら、今回のような複数同時発射の訓練頻度も上がっている。米韓合同軍事演習への対抗というより、自軍の作戦能力を実地で検証しているという側面も否定できない。
韓国と日本の防衛当局はミサイルの詳細な諸元(飛行距離・高度・速度)の分析を続けているが、完全な情報開示には時間がかかる見通しだ。日本政府はJアラートを含む警戒態勢の運用を再点検する方針を示しており、防衛費増額議論にも新たな材料が加わることになりそうだった。
この先どうなる
当面の焦点は三つ。①国連安保理が実効性ある決議を出せるか、②米韓が演習規模を縮小するカードを切るか、③北朝鮮が次の段階として核実験や長距離弾道ミサイルの発射に踏み切るか——だろう。過去のサイクルでは、発射→非難→小康状態→また発射という流れが定着してしまっている。その連鎖を断ち切る外交的出口が見えない中、北東アジアの緊張はしばらく高止まりのまま推移しそうだ。ただ、それが「いつもの北朝鮮」だからといって慣れてしまうのも、それはそれで危ういわけで。