ホルムズ海峡封鎖リスクが、いま外交の最前線に浮上している。ルビオ米国務長官がイランとの協議の場でこう口にしたらしい——「朗報が近く得られる可能性がある」と。世界の原油輸送量の約20%、液化天然ガスの約30%が通過するこの海峡が動揺すれば、その影響は日本のガソリン価格にも直結する話だ。

ルビオが言う「朗報」とは何か——イラン核交渉の現在地

トランプ政権はここ数週間、イランとの核交渉を断続的に続けてきた。浮上しているシナリオは、制裁緩和と引き換えにイランの核開発を制限するというもの。表向きの構図はシンプルだが、実際には革命防衛隊の影響力という根深い問題が交渉の壁になっているとみられている。

革命防衛隊はイランの正規軍とは別系統の武装組織で、核開発にも石油輸出にも深く食い込んでいる。ハメネイ師と政府が合意したとしても、革命防衛隊が従うかどうかは別の話——ここが引っかかった。過去の交渉が何度も頓挫してきた原因のひとつがこれだった。

「Rubio Says 'Good News' Likely on Hormuz as Iran Talks Go On」——Bloomberg, 2026年5月

ルビオ発言が出たタイミングで市場はすでに反応していた。原油価格と金利が同時に動いており、トレーダーたちが「合意が現実になるか」という賭けに入りつつある格好だ。ルビオ イラン交渉への期待感が先行しているとも言える。

封鎖されたら「2008年級の不況」——エネルギー調査会社が出した試算

ラピダン・エナジーが警告しているのは、ホルムズ海峡が封鎖された場合のシナリオだ。同社の試算では、2008年のリーマン・ショック級の景気後退が再来しうるという。

数字で確認しておくと、世界の石油輸出の約2割、LNG輸出の約3割がこの幅わずか33キロの海峡を通っている。サウジアラビア、イラク、UAE、クウェート——中東の主要産油国からの輸出ルートがほぼここに集約されている。代替ルートは存在するが、処理能力には限界があり、即座に肩代わりできるものではない。

イラン核合意と原油価格の連動はこれまでも何度も繰り返されてきたパターンだ。2015年のJCPOA(包括的共同行動計画)合意時には原油が急落した。逆に2019年のタンカー攻撃事件では一時急騰した。今回の「朗報」発言が本物であれば、原油への下押し圧力が強まる可能性がある。

この先どうなる

最大の焦点は、交渉が「枠組み合意」と「完全合意」のどちらで着地するかだろう。枠組みだけなら市場の反応は一時的なものにとどまりやすい。完全合意なら制裁緩和によりイラン産原油が市場に戻ってくる可能性があり、OPECの増産と重なれば原油価格への下押しが長引くシナリオも考えられる。

一方でイラン国内の強硬派が交渉をひっくり返す可能性はゼロではない。ルビオの「朗報」発言が本当に結実するかは、革命防衛隊がどこまで飲めるかにかかっているかもしれない。とはいえ、「合意に向かいつつある」というシグナルが米国務長官から出たこと自体は、それなりに重い動きと受け取っていいんじゃないか。