ホルムズ海峡封鎖解除について、米政府当局者がニューヨーク・タイムズに漏らした内容は、ひとことで言えば「信じがたいが、ほぼ本物らしい」話だった。米・イラン両国は、海峡の再開通とイランによる高濃縮ウランの廃棄で原則合意に達したという。正式な署名にはなお数日かかる可能性があると、当局者は慎重な言い方を崩さなかった。
世界の原油20%が通る「咽喉部」が動き出す
ホルムズ海峡は、世界の原油輸送量の約20%が通過する水路だ。湾岸産油国からアジア・欧州へ向かうタンカーは、ここを避けて通れない。封鎖が続けばエネルギーコストが跳ね上がり、欧州のインフレ再燃、アジア製造業のコスト圧迫が連鎖する構図があった。それが解かれるなら、原油市場への即効性は小さくない。ただ、相場がどう動くかは「封鎖解除の確度」をトレーダーがどう読むか次第で、原則合意の段階では織り込みも慎重になりがちだ。
「両者はホルムズ海峡の再開通とイランによる高濃縮ウランの廃棄について原則合意に達したが、合意文書にはまだ署名されていない」——米政府当局者(ニューヨーク・タイムズ)
もう一つ見逃せないのが高濃縮ウランの廃棄だ。イランが保有する高濃縮ウランの量は、核合意崩壊後に急増してきた。イスラエルが軍事行動をちらつかせてきた最大の根拠がここにある。それが「廃棄」となれば、イランの核兵器開発能力は事実上リセットされる。イスラエルにとっては最大の脅威シナリオが消える話で、中東の安全保障の前提が根本から変わる可能性がある。
「原則合意」が崩れてきた、あの記憶
ここで引っかかるのは、「原則合意」という言葉の重みだ。米イランの核交渉は2015年のJCPOA合意以降、合意→離脱→交渉再開→暗礁、のサイクルを繰り返してきた。2022年のウィーン交渉も「合意間近」と報じられながら最終局面で破談した。今回の情報源が「政府当局者」の匿名ベースである点も、確定情報として扱うには慎重さが要る。米イラン和平交渉2025という文脈で見れば、今回は制裁緩和を求めるイランと、中東安定化を急ぐトランプ政権の利害が重なっているのは確かで、過去の交渉より妥結への動機は強いとも言えそうだが、サインが出るまでは「らしい」以上にはならない。
この先どうなる
最初に動くのはおそらく原油先物と中東関連株だ。正式署名の報が出れば、封鎖リスクプレミアムの剥落が起きる可能性がある。イランの高濃縮ウラン廃棄の検証プロセスがどのスケジュールになるかも焦点で、IAEAの関与方法次第で合意の実効性が問われる。イスラエルは今回の交渉を終始警戒してきた立場だけに、ネタニヤフ政権の反応も注目点になる。数日以内とされる署名が本当に行われるかどうか——その一点に、今は世界中の視線が集まっている。