ベン・グビル入国禁止——フランスが現職のイスラエル閣僚に対してこれほど明確な排除措置を取ったのは、記憶にない話だった。報道によれば、直接の引き金はガザ支援を目的としたフロティラ船団の活動家たちへの拘束・虐待疑惑。通常、同盟国閣僚相手にここまで踏み込む国はそうそうない。それがフランスは踏み込んだ、ということになる。

フロティラ活動家拘束が火をつけた「閣僚排除」の異例措置

フロティラとは、ガザ封鎖を突破しようとする人道支援船団のこと。今回問題になったのは、その活動家たちがイスラエル当局によって拘束された際の扱いだ。虐待疑惑が浮上し、欧州各国の世論が反応した。フランスはその流れの中で最も強い行動に出た国になった。

ベン・グビルという人物を整理しておくと、もともと極右政党「ユダヤの力」の党首で、パレスチナ人囚人への過酷な待遇を公言してきた政治家だ。国際社会からは以前から批判を浴びていたが、ネタニヤフ連立政権の閣僚として権力の座にある。

「イスラエルの国家安全保障相イタマル・ベン・グビルは、パレスチナ人囚人に対する強硬発言と過酷な政策をめぐり長年批判を浴びてきた」(The New York Times)

そういう人物だからこそ、フランスの判断は単なる外交的なポーズではなく、「これ以上は黙認しない」という意思表示に見えてくる。フランス・イスラエル外交の関係は、ここ数年でじわじわと冷えてきていたが、今回の入国禁止で臨界点を越えた感がある。

欧州が「名指し排除」に踏み切ると何が変わるのか

欧州主要国が現職閣僚を個人として入国拒否した事例は極めてまれだ。通常、外交的な不満は声明や大使召還、経済的な圧力で表現される。それが今回、フランスは個人のビザ・入国権限に直接手を入れた。これは象徴的な意味が大きい。

フロティラ活動家拘束の問題は、ガザ停戦交渉とも無縁ではない。欧州各国は人道支援ルートの確保を停戦協議の条件の一つとして位置づけており、その活動家を拘束・虐待したとされる閣僚を「入国禁止にした」という事実は、今後の交渉テーブルでも引き合いに出されることになるだろう。イスラエルとEU諸国の亀裂は、もはや修復に相当な時間を要する段階に来ている、とみていい。

この先どうなる

フランスの動きが呼び水となり、他のEU加盟国が追随するかどうかが当面の焦点だ。欧州議会でもガザ問題をめぐるイスラエルへの批判決議が繰り返されており、個別国による入国禁止措置がEUレベルの政策議論に波及する可能性もゼロではない。一方、イスラエル側は外交的圧力に屈しない姿勢を維持しており、短期的に関係が改善される見通しは薄い。ガザ停戦交渉が欧州の仲介なしには成立しにくいという現実が、この対立をどう動かすか——そこが次の読みどころになってくる。