ナシル・ベストが拳銃を取り出した瞬間、ホワイトハウス警備のチェックポイントまでの距離はほんの数十メートルだった。2025年5月31日午後6時直前、ワシントンD.C.のペンシルベニア通りと17番街の交差点。21歳の男はバッグから銃を引き抜き、発砲を開始。現場に配置されていたシークレットサービス捜査官がすぐさま応戦し、ベストは被弾。搬送先の病院で死亡が確認された。通行人1名も負傷したとされるが、詳細は明かされていない。
シークレットサービスが「既知の人物」と認識していた21歳
調べていて引っかかったのは、この点だ。CBSの報道によれば、ナシル・ベストはシークレットサービスおよびD.C.警察の双方にとって「既知の人物」であり、精神疾患の記録を持っていたという。
「The BBC's US media partner CBS has named the suspect as Nasire Best, a 21-year-old man who was known to the protection agency and had a documented history of mental health conditions.」(BBC報道より)
つまり当局はベストを事前に把握していたわけだが、それでも今回の襲撃を未然には防げなかった。監視と対応の間にどんなギャップがあったのか——そこはまだ調査中だ。トランプ大統領はSNSの「Truth Social」に投稿し、「暴力的な経歴を持ち、我が国で最も大切な建物への執着がある人物だった」と記した上で、捜査官の「迅速かつ専門的な対応」に感謝の意を示している。
わずか1か月前にも、ホワイトハウス周辺で銃撃事件
タイミングも気になるところで、今回の事件はホワイトハウス記者協会ディナーで銃撃事件が起きてからちょうど1か月後にあたる。ホワイトハウス周辺での発砲が立て続けに起きている格好で、警備体制への問い直しが避けられない状況になりつつある。シークレットサービス銃撃への対応自体は「任務に影響なし」とされており、事件当時トランプ大統領はホワイトハウス内に滞在していたが、警護対象者の安全は確保されていたと発表されている。現場周辺の道路封鎖は一夜明けても続く見通しで、捜査は進行中だ。
この先どうなる
FBI・シークレットサービス・D.C.警察による合同捜査が本格化し、ベストの動機や単独犯かどうかの解明が急がれる。「既知の人物」をどこまで事前に制限できるのかという法的・運用上の問題も浮上してくるはずで、ホワイトハウス警備の見直し議論に発展する可能性は高い。精神疾患の記録がある人物への接近規制のあり方も、今後の論点になりそうだ。