JCPOAをめぐり、トランプ前大統領がまた動いた。Truth Socialへの投稿で「我が国が締結した中で最悪の合意の一つ」と断言し、イラン核合意を真っ向から否定してみせた。第2次政権が本格始動する前から、この強さで言葉を投げてくるのは気になるところだった。

2015年の合意がここまで嫌われた理由

そもそもJCPOAは2015年、オバマ政権が主導して米英仏独中露の6カ国とイランが結んだ枠組みだった。イランが低濃縮ウランの備蓄を大幅に削減し、遠心分離機の稼働を制限する見返りに、欧米の経済制裁を段階的に解除するという取引だ。

トランプ氏が最初からこれを嫌った理由は「10〜15年の期限付き」という設計にある。期限が来れば制限がなくなる——そこを「欠陥」と呼び続け、2018年に一方的に合意を離脱。最大圧力政策へと転換した。対イラン制裁を史上最大規模で積み上げ、イランの石油輸出を事実上封じ込めようとした方針だ。

「我が国が締結した中で最悪の合意の一つが、イラン核合意だ。提示され、署名された」——Donald J. Trump(Truth Social, 2025)

ところが、その強硬策が核開発を止めたかといえば逆の結果になっている。バイデン政権はJCPOAの復活交渉を試みたが実質的に頓挫。イランのウラン濃縮度はその間に一気に上昇し、現在は兵器製造に必要とされる90%に迫る水準まで達しているとの報告が出ている。

最大圧力政策の再発動、数字で見ると

トランプ第2次政権がイランに向けて取れる手札は大きく3枚。制裁の強化、軍事的圧力の示唆、そして外交的孤立の徹底だ。対中イラン石油制裁もその文脈で読める動きで、実際に2025年に入って新たな制裁が打ち出されたという報道も出ている。

ただ、ここで引っかかるのは「圧力をかけるほど濃縮度が上がる」という皮肉なサイクルだ。イランは制裁強化に対して核活動の拡大で応じてきた経緯があり、これが単純な力押しで解決しにくい理由の一つでもある。イラン核合意の枠組みは壊れても、核そのものは止まっていない。

この先どうなる

トランプ政権が最大圧力政策を本格再起動すれば、イランへの石油輸出制裁の抜け穴を塞ぐ動きが加速するとみられる。特に中国向け輸出への圧力が焦点になりそうで、習近平との取引材料になる可能性も消えていない。

一方でイランが濃縮度を90%まで引き上げた場合、イスラエルの単独軍事行動という選択肢が現実味を帯びてくる。JCPOAというブレーキが機能していた時代は遠くなった。次の交渉のテーブルがどんな形で設けられるか——あるいは設けられないか——それが今の焦点だろう。