Uber Delivery Hero買収――その提案額が明らかになった瞬間、フードデリバリー業界の地図が書き換わりかけた。Bloombergが報じたところによると、ウーバーはドイツのDelivery Heroに対し、1株33ユーロでの買収提案を提示したという。フードパンダなどのブランドを抱え、アジア・中東を中心に数十カ国で展開する巨大プラットフォームが、米ライドシェア最大手の傘下に入る可能性が浮上した。

ドアダッシュも動いた――33ユーロをめぐる三つ巴

今回の話でひっかかったのは、ウーバーだけが動いていたわけではないという点だった。ドアダッシュも同じタイミングでDelivery Hero株の取得交渉を進めているとされており、事実上の争奪戦になっている。フードデリバリーM&Aとしてはここ数年で最大規模になる可能性があり、どちらが制するかで北米・欧州・アジアのデリバリー勢力図は一変する。

Delivery Heroの株価はここ数年、苦しい展開が続いていた。採算性の改善が遅れ、投資家の忍耐も限界に近かったとも言われている。そこへ33ユーロという具体的な数字が出てきたことで、市場は一気に反応した格好だ。

「Uber Proposes Delivery Hero Takeover in €33-Per-Share Offer」――Bloomberg, 2026年5月23日

ウーバー側の意図はほぼ明白で、ウーバーイーツとDelivery Heroのネットワークを統合すれば、欧州・アジア市場における配送インフラは一気に分厚くなる。特にフードパンダが強い東南アジア・中東のカバレッジは、ウーバーイーツ単独では埋めにくいピースだった。

欧州競争当局という最大の関門

ただ、この話が順当に進むかといえば、そう単純じゃないだろう。欧州競争法の観点からの審査が、最大の壁として立ちはだかる。EU競争当局は近年、プラットフォーム企業同士の大型M&Aに対して厳しい姿勢を取り続けており、条件付き承認や一部事業売却を求めるケースも珍しくない。

仮にドアダッシュが競り勝った場合でも構図は変わらない。米国のフードデリバリーM&Aとはいえ、欧州に事業基盤を持つDelivery Heroを含む取引なら、EU当局の管轄が及ぶ可能性が高い。いずれの買い手が勝っても、規制審査という長いトンネルが待っている。

この先どうなる

まず焦点になるのは、Delivery Hero側の正式な回答だろう。33ユーロという提示額を受け入れるか、あるいは対抗提案を引き出す材料として使うか――交渉の行方次第で、ドアダッシュが切り崩しに出る余地も残る。EU競争当局の審査は長ければ1年以上かかることもあり、承認が下りるまでの間、Delivery Heroの経営は宙ぶらりんになる。フードデリバリーM&Aとしてこれだけの規模の案件が同時進行するのは異例で、業界全体の再編がこの一件を軸に動き始めた印象がある。続報を待ちたい。