製造業PMIの数字が、久しぶりに世界地図を塗り替えた。S&Pグローバルが発表した最新データによると、英国と米国を除くほぼすべての主要国・地域で製造業活動が鈍化、もしくは収縮圏(50割れ)に沈んだ。しかも背景にあるのは景気循環の波ではなく、ウクライナ紛争に端を発したエネルギー・食糧コストの長期化という、政策では簡単に手が届かない要因だ。
ドイツと中国、外需まで崩れ始めた
もともと内需が弱いドイツと中国は、輸出という「外付けエンジン」で成長を保ってきた。ところが今、そのエンジンも息切れしつつある。エネルギーコスト上昇で製造コストが膨らみ、輸出競争力が削られる構図。調べてみると、両国が同時に外需失速に直面するのはコロナ禍以来のことらしい。
ユーロ圏の工場では採算ラインを下回るケースが増えており、減産・人員削減の報告が相次いでいる。中国でも内需回復の遅れが輸出頼みの姿勢を強め、皮肉にも世界需要が弱いタイミングと重なってしまった。
「S&Pグローバルが発表した製造業PMI指数は、英国と米国を除き、木曜日に公表されたすべての指標で活動鈍化もしくは収縮に転じた。」(Bloomberg)
英米だけが辛うじてプラス圏を維持している点は興味深い。米国はサービス業主導の経済構造と、エネルギー自給率の高さが下支えしている格好だ。
ECBとFRBが逆方向へ、通貨市場が揺れる理由
ここで厄介なのが主要中央銀行の方向性のズレだ。ECBはインフレ鈍化を受けて利下げに前傾みせているのに対し、FRBは2%超のインフレを理由に据え置き路線を維持している。この戦争インフレ下における政策の非同期が、ユーロ・ドル相場を中心に通貨市場の攪乱要因になっている。
通常、利下げ国の通貨は売られる。ECBが先行して緩和に動けばユーロ安が進み、輸入インフレがぶり返す可能性もある。利下げしたいのに、利下げすると別のインフレを呼び込む——ECBが直面しているジレンマは相当に深い。
製造業PMIの悪化が中銀の利下げ余地まで狭める、という連鎖が今まさに起きている。
この先どうなる
焦点はふたつ。ひとつはウクライナ情勢の見通し。停戦協議が進展すればエネルギーコスト圧力が和らぎ、製造業PMIの反転余地が生まれる。もうひとつはFRBの動向で、利下げ転換のシグナルが出た瞬間にドル安→新興国製造業にとっての輸出環境改善という連鎖が期待できる。ただ、どちらも「いつ」の話かは霧の中。ECBとFRBの乖離が続く限り、通貨市場の荒れた状態はしばらく解消しそうにない。秋の欧米中銀会合が次の節目になるかもしれない。