ブンジブジョ型エボラウイルスが、コンゴ民主共和国東部のイトゥリ州で確認された死者数をじわじわ押し上げている。赤十字ボランティア3人が遺体処理の現場で感染し、5月から16日の間に相次いで亡くなったとIFRC(国際赤十字・赤新月社連盟)が明らかにした。最前線にいた人間が最初に倒れる——そういう構図が、また繰り返された。
赤十字ボランティア3人、感染は「流行認識の前」だった
3人の名はアリカナ・ウドゥムシ・オーギュスタン、セザボ・カタナボ、アジコ・チャンディル・ヴィヴィアン。全員が現在の流行震源地・モングワル市内で活動していた。感染したのは3月27日とみられ、エボラ流行が公式に認識される以前のことだったらしい。つまり3人は、ウイルスが「流行」と認定されるより前に、静かに感染していた。
エボラ患者の遺体は、死後も体液中にウイルスが高い感染力を維持する。それを知らずに——あるいは知っていても対策が間に合わずに——作業した結果が今回の悲劇につながったということだ。IFRCは「勇気と人道精神をもって地域に奉仕した」と追悼コメントを発表している。
「今回の集団感染は『ブンジブジョ型』と呼ばれる希少なエボラ株によるもので、承認ワクチンは存在せず、感染者の約3分の1が死亡する」(BBC Africa報道より)
コンゴ民主共和国の感染症対応は過去にもエボラに何度も直面してきたが、今回はやっかいな点がある。ブンジブジョ型は希少株であるがゆえに、他のエボラ型で使われる既存ワクチンが適用できない。致死率は約33%。3人に1人が死ぬ計算で、しかも使える予防接種がない。
WHO「非常に高い」——750件・170人超という数字が示すもの
5月23日、WHOはコンゴ国内のリスクレベルを「高い」から「非常に高い」へ引き上げた。テドロス事務局長はアフリカ地域全体のリスクも「高い」と評価しつつ、世界的リスクは現時点で低いとした。疑い症例は750件、疑い死者は170人超——数字だけ見ると、2014〜2016年の西アフリカ大流行とは桁が違う。ただし、コンゴ東部は長年の武装紛争が続く地域で、医療チームのアクセスが制限されやすいという背景がある。数字に見えない感染者が潜んでいる可能性は否定しにくい。
コンゴ民主共和国の保健当局は25日、追加の感染拡大防止措置を発動したと報じられている。現場では医療従事者とボランティアが引き続き高いリスクにさらされており、個人防護具の確保と遺体管理プロトコルの徹底が急務になっている。
この先どうなる
ブンジブジョ型エボラに対応できる承認ワクチンがない以上、封じ込めの頼みの綱は「患者の早期隔離」と「遺体の安全な処理」に絞られてくる。WHOとコンゴ政府が連携して接触者追跡を強化できるかどうかが、今後の感染規模を左右しそうだ。武装勢力が活動するイトゥリ州という地理的条件が、それをどこまで阻むかも注目点になる。WHO・IFRC・コンゴ保健省の三者が現場で足並みをそろえられるか——数週間以内に、流行の「峠」が見えてくるはずだ。