米海兵隊がベネズエラ・カラカスの米大使館で急速対応演習を実施した——この一報が指し示す意味は、単なる訓練報告じゃないと思った。大使は2019年以降すでに引き上げ済み。外交関係が事実上の凍結状態にある在外公館で、わざわざ海兵隊が動いた。
大使不在のまま6年、カラカス大使館は「空洞の前哨基地」だった
米国とベネズエラの外交は、マドゥロ政権との対立が深まった2019年を境にほぼ機能を停止している。現在、カラカスの米大使館は最小限のスタッフで運営されており、正式な大使は派遣されていない状態が続いてきた。
そういう場所に海兵隊員を送り込んで急速対応演習をやる、というのは珍しいことらしい。在外公館の警備を担うMarine Security Guard(MSG)は通常から配置されるが、「急速対応」を名目にした演習はより高レベルの脅威想定を意味する。
「米軍によると、海兵隊員がベネズエラの首都カラカスの米大使館において急速対応演習を実施した。」(AP通信)
要するに、館員の緊急退避や施設防衛を想定した訓練を今やった、ということになる。なぜ今なのか、というのが引っかかる部分だった。
ベネズエラ×ロシア×中国——西半球での影響力争いが静かに動いている
マドゥロ政権との外交断絶は今に始まった話じゃない。だが2025年の現時点で状況が変わってきているのは、ベネズエラが対米包囲網とも取れる外交を加速させているからじゃないか。
ロシアからは軍事技術や石油取引の支援を受け続け、中国との経済的結びつきは深まる一方。さらにイランとの連携も維持されており、南米地政学的緊張という観点でこの三角関係を見ると、米国がカラカスの拠点を「捨てられない」理由が見えてくる。
仮に外交的な緊張が一気に高まった場合、大使館員の退避ルートや対応手順が整備されているかどうかは死活問題になる。今回の演習は、その準備が現役であることを示す目的もあったはずだ。2012年のベンガジ事件——リビアの米領事館が襲撃され大使が死亡した事案——以降、米国は在外公館の防衛態勢の甘さを政治的に厳しく問われてきた経緯もある。
この先どうなる
トランプ政権が南米への関与をどう再定義するかが、次の焦点になってくる。マドゥロ政権への制裁は維持されているが、外交的接触の糸口は完全に切れているわけじゃない。一方でベネズエラ側は国際的な孤立を埋めるようにロシア・中国との連携を強化しており、米国にとって「無視し続けるにはうるさい国」になりつつある。
今回の演習が即座に何かの引き金を引くわけではない。ただ、こういうタイミングで訓練情報をAPに流したのは、意図的な発信でもある。「うちはカラカスを見捨てていない」というメッセージが、どこかに向かって飛んだのは確かだろう。