劣化ウラン弾が、再びウクライナの戦場に向かおうとしている。ロイターが複数の関係筋の情報として報じたところによると、米国は新たな軍事支援パッケージの一環として劣化ウラン弾の供与を計画しており、その決定が現地の土壌と将来の復興計画に何を残すかが問われ始めた。
鋼鉄の2.4倍——劣化ウラン弾が「捨てられない理由」
劣化ウランは通常の鋼鉄に比べて約2.4倍の密度を持つ。着弾時に自己研磨して先端が鋭くなる性質もあり、現存する戦車装甲を貫通する能力では他の素材を圧倒する。西側が保有するM1エイブラムスやチャレンジャー2との組み合わせで最大の効果を発揮するとされ、米軍が湾岸戦争以来この弾種を手放せない理由がここにある。
ウクライナ軍はすでにチャレンジャー2を英国から供与されており、対応弾薬の不足が現場の課題になっていた。今回の供与計画が事実なら、それを補う動きとみるのが自然だろう。
「事情に詳しい複数の関係筋によると、米国は新たな軍事支援パッケージの一環として、劣化ウラン弾をウクライナに供与する計画だと報じられた。」(ロイター報道より)
イラクとバルカン半島が残した「30年後の請求書」
問題は、使った後に何が残るかだ。劣化ウランは着弾時に微粒子化し、土壌や地下水に沈み込む。重金属毒性と低レベルの放射線が組み合わさることで、がんや先天性疾患との関連を指摘する研究が湾岸戦争後のイラクで相次いだ。バルカン半島でも1990年代のNATO軍使用後に同様の調査報告があり、完全な因果関係の立証は難しいものの、現地住民の不安は現在も消えていない。
ウクライナの場合、東部の激戦地は農業地帯と重なる。戦後復興で農地として再利用しようとしたとき、土壌汚染がどこまで残っているかは今の段階では予測しにくい。復興コストの試算に、こうした環境除染の費用が織り込まれているかどうか、気になるところだ。
ロシアはすでに強い反発を示しており、NATOとの核リスク拡大を警告する声も欧州内部で出ているらしい。劣化ウランは核兵器ではないが、「ウラン」という言葉が持つ象徴的なインパクトは外交の場では実際の毒性とは別に機能する。そこをロシアが利用しようとするのは、ほぼ確実だろう。
この先どうなる
米国が正式に供与を発表した場合、欧州内でウクライナ支援の温度差がより鮮明になる可能性がある。ウクライナ軍にとって短期的な戦場優位は得られるかもしれないが、戦後の土地回復に関する国際的な議論を早期に整理しておかないと、復興支援を巡る交渉で余計な火種になりかねない。国連や国際赤十字がどう反応するかも注目点で、劣化ウラン弾の使用実態の記録と事後調査を義務付ける動きに発展する可能性もある。短期と長期、どちらの計算が正しかったかは、数十年後にしかわからないかもしれない。