柳沈峪炭鉱爆発で少なくとも90人が死亡した――。金曜夜の19時29分、山西省のこの坑道で何が起きたのか。当時247人が地下で作業していたという数字が、事故の規模をそのまま物語っている。
一酸化炭素「基準超え」、100人超が搬送された夜
爆発が確認された後、坑内の一酸化炭素濃度が基準値を超えていたと国営メディアが伝えた。無色無臭のこの気体が、逃げ場のない坑道でどれだけ広がっていたか。100人超が病院に搬送され、中国緊急管理省は6チーム・345人の救助隊員を現地に送り込んだ。
「中国北部の炭鉱爆発で少なくとも90人が死亡したと、同国の国営メディアが報じた。爆発は山西省で通州グループが運営する柳沈峪炭鉱で発生した」(BBC News / Xinhua)
習近平は救助に全力を尽くし、原因を徹底調査して責任者を追及するよう指示を出した。炭鉱を運営する通州グループの幹部は早々に拘束されている。ただ、幹部を拘束すれば事故が減るかといえば、過去の経緯を見るとそう単純でもなさそうだった。
90人という数字が浮かび上がらせる、山西省の繰り返し
山西省は中国最大の石炭産地として知られる。2000年代前半、中国の炭鉱事故は毎年数千人規模の死者を出していた。その後、安全基準の強化と監督体制の見直しで件数は大幅に減ったとされてきた。それでも2023年には内モンゴルの露天掘り炭鉱で崩落事故が起き、多数の死者が出た。今回の山西省ガス爆発は、その流れの中に位置づけられる一件だといえる。
中国の石炭は今も全発電量の約6割を支えている。省エネや再生可能エネルギーへの移行が語られる一方、山西省の坑道では今夜も誰かがヘルメットをかぶって地下に入っていく。中国炭鉱安全基準がいくら文書の上で厳しくなっても、生産目標と現場の実態の間にある溝が埋まっていないとしたら――そこが今回の事故でも問われているところじゃないか。
この先どうなる
救助作業は現時点でも継続中で、死者数がさらに増える可能性は否定できない。習近平の指示を受け、当局は事故原因の公式調査に着手するとみられる。通州グループ幹部の拘束がどこまで広がるか、また山西省全域の炭鉱への緊急安全点検が実施されるかどうかも注目される。中国政府はこうした大型事故のたびに安全規制の「再強化」を宣言してきた。今回も同じ流れをたどるのか、それとも何か変わるのか。答えが出るのは、もう少し先の話になりそうだ。