イスラエルのレバノン空爆が、停戦合意を結んだ後も止まっていない。5月24日(土)、レバノン第2の都市タイルにある主要病院が攻撃を受け損傷した。タイミングが残酷だった——その日は、前日の空爆で命を落とした救急隊員たちの葬儀が執り行われていた最中だったのだ。
病院と葬儀、同じ日に標的となったタイルで何があったか
ニューヨーク・タイムズの報道によれば、攻撃はレバノン南部の中心都市タイルで発生。市内の主要病院が被弾し、施設に損傷が出た。
「土曜日の空爆はレバノンの都市タイルにある主要病院を損傷した。前日に殺害された救急隊員たちの葬儀が執り行われている最中のことだった。」(ニューヨーク・タイムズ)
救急隊員は本来、ジュネーブ条約によって保護される対象だ。彼らが死に、その葬儀が行われる日に、同じ都市の病院が攻撃される——偶然だとしても、国際人道法の観点から見過ごせない事態として各国政府や人権団体が批判の声を上げている。医療従事者や医療施設への攻撃は条約違反に当たる可能性があり、調査を求める声も出てきているらしい。
「停戦」はもはや名前だけ——レバノン南部の現実
昨年末に成立した停戦合意は、発効直後から散発的な違反事案が積み重なってきた。今回のタイル病院攻撃は、その流れの中でも特に象徴的な出来事として記録されるだろう。停戦は「脆弱」どころか、実態を伴わない枠組みに変わりつつあるという見方が専門家の間でも広がっている。
レバノン南部では今、二つのことが同時に進んでいる。住民の避難と、医療インフラの崩壊だ。病院が機能しなくなれば、怪我人や患者を受け入れる場所がなくなる。人道支援団体が警告する「医療崩壊」が、絵空事ではなくなってきた段階に入っているってことだろう。停戦違反が繰り返されるたびに、現地の市民が選べる選択肢は狭まっていく。
この先どうなる
国際社会の批判が高まる中、停戦監視の仕組みをどう機能させるかが焦点になるとみられる。現状の合意には実効的な違反抑止メカニズムがほぼ存在せず、米国やフランスなど仲介国が何らかの圧力をかけるかどうかが鍵を握る。タイル病院攻撃については、国連やICRCが事実関係の調査を求める可能性が高い。ただ過去の事例を見る限り、調査が始まったとしても現地の攻撃が止まった試しは少ない。レバノン南部の人道状況は、外交的解決の糸口が見つからない限り、さらに悪化していく可能性が高そうだ。
