フランス大統領選の開票結果が伝わった瞬間、ユーロは対ドルで急落した。タイミングは鮮明で、売りは一方向。投資家がリスク回避でドルに殺到したのは、単なる選挙サプライズではなく、欧州全体の信用問題として市場が受け取ったからではないか。
2017年との決定的な違い——三重の重荷
「欧州政治リスク」が話題になるたびに引き合いに出されるのが2017年の仏大統領選だ。あのときも市場は一時凍りついたが、数日で落ち着きを取り戻した。今回が違うのは、ユーロ圏がすでに三つの重荷を背負っている点だった。
ウクライナ支援に伴う戦費の膨張、エネルギー危機による調達コストの高止まり、そして各国政府が積み上げてきた財政拡大——この三つが同時に存在するなかでの政治的混乱は、2017年とはまったく別の話になりうる。
「フランス大統領選の余波が市場を直撃し、投資家がリスク回避に動くなか、ドルが急伸しユーロが急落した。欧州資産への信頼が大きく揺らいでいる。」(Financial Times)
フィナンシャル・タイムズがこの動きを「欧州資産への信頼喪失」と位置付けたのは、為替だけの話ではないと見ているからだろう。株式・債券にまで連鎖するリスクを、市場参加者は織り込みに動いていた。
ECB利下げが止まれば、円と新興国まで揺れる
フランスはユーロ圏で第二の経済規模を持つ国。その政治的不安定が長引けば、欧州中央銀行は利下げペースを慎重に落とさざるをえない。ここが波及ルートとして引っかかった。
ECBの利下げ期待を前提に動いてきたのは欧州だけではなかった。新興国市場はドル高・ユーロ安の組み合わせに脆弱で、資金フローが一気に逆流するシナリオが現実味を帯びる。日本円についても、円安圧力が重なればドル円の上昇余地がさらに広がるとの見方が出ていた。ユーロドル急落が、ECB利下げ影響を通じてアジアにまで届く構図だ。
この先どうなる
焦点は二つ。一つは新政権(あるいは混乱した連立)が財政規律に対してどんなシグナルを出すか。市場が最も嫌うのは「方向感のなさ」であって、左右どちらに振れるかより、不確実性が続く期間のほうが問題になりやすい。
もう一つはECBの次の会合での発言トーン。ラガルド総裁が「フランスの政治リスクを注視」と一言でも口にすれば、それだけで利下げ観測が後退し、ユーロドルの動きが再び荒れる。ECB利下げ影響を測るうえで、次の声明文は文字通り一語一語が値段を動かす可能性がある。フランス発の波紋が、どこで止まるかはもう少し時間が必要そうだ。