トランプ経済政策が、ついに「軍事力を価格操作のレバーにする」段階に入ったらしい。Truth Socialへの投稿で、イランとベネズエラへの軍事的圧力がアメリカの経済再生を直接加速させているとトランプ前大統領は主張した。原油産出国を外交ではなく力で押さえ込み、エネルギー価格と国内産業の競争力を同時に動かそうという発想——これを「経済政策」と呼んでいいのか、調べるほどに引っかかる部分が多かった。

イランとベネズエラを「コスト削減装置」にする計算式

論理の骨格はシンプルだ。イランへの制裁と軍事圧力で原油輸出を締め上げる。ベネズエラへの圧力で中南米産油国の市場シェアを削る。その分だけアメリカ国内の掘削事業者に需要が流れ、エネルギー自給率が上がる——という連鎖を想定しているようだった。

ベネズエラ制裁については、トランプ政権一期目から続く話だ。マドゥロ政権への制裁強化で国際市場からベネズエラ産原油を遠ざけ、その空白をアメリカのシェール産業が埋める、という筋書きは当時も存在していた。それを今度は対イラン軍事圧力とセットにして、「経済再生の証拠」として提示している。

「トランプの世界的賭け:イランとベネズエラへの攻撃がいかにアメリカの経済復活を後押ししているか」(ソース原文見出しより)

「賭け」という言葉が使われているのは偶然じゃないと思う。この論理が成立するには、ホルムズ海峡が封鎖されないこと、中東の緊張がコントロール可能な範囲に収まること、という前提が必要だからだ。その前提が崩れた瞬間、エネルギーコストは逆方向に跳ね上がる。

アジア各国が静かに追い詰められている理由

ここが見落とされやすい部分だった。対イラン軍事圧力の余波は、中東産原油への依存度が高い日本・韓国・インドに直撃する。ホルムズ海峡の緊張が続く限り、タンカー保険料は上がり、輸送コストは上がり、それが製造業のコスト構造に乗ってくる。

アメリカ国内では「産業復活」に見えるものが、アジアの製造業にとっては「コスト増」として現れる——この非対称性がじわじわと効いてくる。日本企業がアメリカ向けの輸出競争力を削られる可能性もあり、単純に「同盟国だから安全」とは言い切れない構図になっている。

もちろん、これが選挙を見据えた国内向けの言説に過ぎない可能性もある。「強いアメリカが経済を取り戻した」というナラティブは、有権者に響きやすい。力と繁栄を結びつけるメッセージは、政策の細部より先に感情に届く。

この先どうなる

焦点は二つに絞られそうだった。一つは、イランが核交渉のテーブルに戻るか、あるいは海峡封鎖で「反撃」に出るか。もう一つは、中国がベネズエラや中東の空白をどう埋めるか——習近平政権はすでに中東産油国との関係強化を進めており、アメリカが締め上げた穴に別の大国が入り込む展開は十分ありえる。トランプ経済政策の「軍事連動型」が機能するかどうかは、地政学の偶発性に大きく左右される。賭けと呼んだソースの表現は、案外正確だったかもしれない。