タルシー・ギャバード辞任の一報が入った瞬間、まず引っかかったのは「なぜ今か」ではなく「そもそもいつからいなかったのか」という疑問だった。辞表提出は6月27日。有効日は6月30日。理由は夫アブラハム氏の骨がん診断だ。トランプ大統領はソーシャルメディアで「信じられないほど素晴らしい仕事をしてくれた。寂しくなる」と送り出した。後任の長官代行にはアーロン・ルーカス主席副長官が充てられる。
イラン・ベネズエラ…重大局面でトップ不在だったDNI
米国最大の諜報機関を束ねる国家情報長官(DNI)は、大統領に日々インテリジェンスを届ける要職だ。ギャバードはトランプの2024年大統領選を支えた側近として就任直後から注目を集めた。ところが今年に入り、米軍のイラン軍事作戦、キューバへの新たな圧力、ベネズエラ大統領の実質的な排除という三つの重大局面がほぼ同時に走っていた。この間、彼女は公の場にほとんど姿を見せていなかった。
辞任後に辞表の内容が広まり、その言葉が改めて注目された。
「彼の強さと愛があらゆる試練を乗り越えさせてくれた。私がこの過酷で時間を要するポジションを続けながら、彼に一人でこの闘いに向き合わせることは、良心に従えばできない。」
個人的な言葉として読めば真剣な覚悟が伝わる。一方で記者としての目線で見ると、DNIがすでに公の場で機能を果たせていなかったとすれば、辞任が正式化したタイミングは政権にとって損失が小さかった、という見方もできる。
今年4人目の閣僚離脱——トランプ政権「人事の穴」が続く
今年の閣僚離脱はギャバードで4人目になる。クリスティ・ノエム国土安全保障長官、パム・ボンディ司法長官、ロリ・チャベス=デレメル労働長官——いずれもトランプ第2期を象徴する顔ぶれだった。トランプ政権 閣僚離脱のペースとして異常かどうかは議論の余地があるが、国土安全保障・司法・労働・国家情報という四分野が同じ年に交代を迎えたのは事実として重い。
特にDNIは性質が違う。議会承認が必要なポジションであり、長官代行による運営には法的・政治的な時間制限が伴う場合がある。ルーカス代行がどれだけの期間この役を担えるか、次の正式指名がいつ出るか。そこに注目が集まっている。
この先どうなる
トランプ大統領が次のDNI指名をいつ発表するかは未定だ。承認公聴会を経て正式就任となれば数カ月単位の空白が生じる可能性もある。その間、ルーカス代行がイラン核情報やロシア介入分析といった機微なインテリジェンスを大統領に届け続ける形になる。ギャバード自身が公の場で不在だった期間の評価も、いずれ出てくるだろう。「寂しくなる」と言ったトランプが次に誰を選ぶか——それが政権の現在地を測る一つの指標になりそうだ。