PCEインフレが4%に迫った——その数字が示すのは、遠い中東の戦火が気づけばアメリカの家計に乗り込んでいるという現実だ。Bloombergが報じたデータによると、イラン有事に連動したエネルギー価格の急騰が、FRBの最重視するインフレ指標を押し上げている。

ガソリンが上がると、なぜ食料品まで値上がりするのか

原油高の波及経路を追うと、驚くほど広い。ガソリン価格の上昇は輸送コストを押し上げ、農産物の仕入れから小売の棚に並ぶまでの工程で、じわじわと値段に上乗せされていく。企業側も「もう我慢できない」とばかりに値上げを再開し始めており、コアインフレが粘り続ける中にエネルギー起源の上振れが重なった格好だ。

More War-Driven Inflation Seen in Fed's Favored Gauge(Bloomberg, 2026年5月23日)

つまりFRBが今見ているのは、二重のインフレ圧力。粘着するコアインフレの上に、戦争コストが乗っかってきたという状況らしい。これでは「そろそろ利下げを」という議論が吹き飛んでしまう。

FRB利下げ停止が招く「静かな景気後退」シナリオ

金利が高止まりすると、真っ先に傷むのは住宅ローンと中小企業融資だ。30年固定の住宅ローン金利が高水準を維持すれば、家を買える層はさらに狭まる。中小企業は運転資金の調達コストが上がり、採用や設備投資を絞らざるを得ない。一つひとつは小さな判断でも、積み重なれば内需が静かに萎む。景気後退と呼ぶには時間がかかるが、その下地は着々と整いつつあるんじゃないかと感じた。

FRB利下げ停止の長期化は、ウォール街だけの問題ではない。日本を含む新興国への資本流出、ドル高による輸入物価の押し上げと、波紋は世界に広がる。イラン有事エネルギー価格の動向が、そのまま世界の金融環境を左右するという構図が出来上がってしまっている。

この先どうなる

最大の焦点は次のFOMCでパウエル議長がどんな言葉を選ぶかだ。「利下げは検討外」と明言すれば市場は改めて金利高止まりを織り込み直す。逆に「データ次第で柔軟に」と含みを持たせれば、一時的なリスクオン相場が来るかもしれない。ただ、根本にある問題——停戦が実現しない限り、エネルギー起源のインフレは消えないという現実——は、中央銀行のコメントひとつで変わるものでもない。PCEインフレが4%を突き抜けるか、それとも停戦報道でエネルギー価格が反転するか。しばらくは原油市場とワシントンの外交チャンネルを同時に眺める日が続きそうだ。