ネタニヤフ・イラン和平交渉排除——その事実をニューヨーク・タイムズが報じたとき、驚いた人より「やっぱり」と思った人のほうが多かったかもしれない。米国とイランが核をめぐる交渉を本格化させる中、イスラエルは席すら用意されていなかった。かつてトランプ政権の対イラン強硬路線をともに主導した盟友が、今や外側から窓を覗く立場に回っている。

ネタニヤフが「副操縦士」から「乗客」になった理由

2018年のイラン核合意(JCPOA)離脱、2020年のソレイマニ司令官暗殺——いずれもイスラエルの強い働きかけが背景にあったとされる。ネタニヤフ首相にとってトランプとの関係は、単なる外交チャンネルではなく「対イラン包囲網」の生命線だった。

ところが2025年以降、ワシントンの優先課題は変わった。トランプ政権第2期は制裁の段階的解除と核活動の凍結を柱とした枠組み交渉に舵を切り、イランとの直接対話を選んだ。交渉を急ぐ側にとって、イスラエルの「イランの核は完全に潰せ」という強硬論は、テーブルを壊しかねない要素として映ったようだ。

「戦争では共に戦ったパートナーでありながら、イスラエルは和平交渉からほぼ締め出された。これはネタニヤフ首相にとって屈辱的な後退であり、国家にとっても重大なリスクを孕んでいる」(ニューヨーク・タイムズ)

トランプ・イスラエル関係悪化は、感情論ではなく利害の再計算から来ている。ホワイトハウスにとって今は「イランと合意を作ること」が実績になる。その文脈でネタニヤフの存在感は薄れるばかりか、邪魔になり得る。

イランの核能力が「温存」されたとき、直撃を受けるのはどこか

外交的な孤立だけなら、まだ耐えられるかもしれない。問題はその先にある。

米イラン核合意が「核活動の制限」にとどまり、核兵器開発能力そのものを完全に除去しない形で着地した場合——イスラエルにとっては、潜在的な核の脅威が国境の向こうに生き残ることを意味する。しかも今回は、自国が口を挟める立場にない状態で合意が作られる。

イスラエル国内の安全保障専門家の間では「交渉の枠組みに入れないなら、物理的な手段でイランの核施設を叩く圧力が高まる」という見方もある。実際、過去にイスラエルは単独でイラク(1981年)やシリア(2007年)の核施設を空爆してきた前例がある。交渉テーブルを失うことで、かえって軍事オプションへの誘惑が増す、という逆説が生まれつつある。

この先どうなる

最大の焦点は、米イラン間で合意の骨格が固まった際にイスラエルが「既成事実」として受け入れるか、それとも独自行動に踏み切るかだ。ネタニヤフ政権は国内右派への説明責任も抱えており、外交的敗北を黙認し続けることは政治的に難しい。一方、米国にとってはイスラエルによる単独攻撃こそが、せっかくの交渉を一瞬で吹き飛ばす最大のリスクになる。トランプ・イスラエル関係悪化が「冷却」で済むのか、「決裂」へ向かうのかは、今後数週間の交渉進捗次第だろう。米イラン核合意がどこまでイランの能力を縛れるかが、中東の次の地図を決める。ネタニヤフが蚊帳の外で何をするか、そっちのほうが実は読めない。