イラン戦争と航空便の影響が本格化している。ジェット燃料の価格が急騰し、「夏休みのフライトが消える」という観測が市場に流れた――しかし現実はもう少し複雑な動きをしている。ブルームバーグ・オピニオンのエネルギーコラムニスト、ハビエル・ブラスが2026年5月22日付で示した見立ては、「今夏、航空会社は飛び続ける」というものだった。

中東の飛行禁止区域が広げた「迂回コスト」の実態

イランをめぐる軍事的緊張が高まる中、中東上空の飛行禁止区域は段階的に拡大された。直撃を受けたのは欧州―アジア間のルート。従来のルートを使えなくなった航空各社は大幅な迂回を余儀なくされ、飛行時間が1〜2時間以上延びるケースも出ている。

飛行時間が延びれば、当然ジェット燃料の消費量は増える。ただでさえ価格高騰しているジェット燃料が、迂回によってさらに多く必要になるわけで、二重のコスト増が航空会社の収益を圧迫している構図だ。一部路線の運休観測や航空券の値上がり予測が出たのも、こういう背景があってのことらしい。

「燃料価格の上昇が航空機の運航停止と休暇の混乱への懸念を呼んだ。なぜ航空会社が今夏も飛び続けると予測されるのかを解説する」(ブルームバーグ、ハビエル・ブラス)

それでもブラスが「夏は大丈夫」と見ている理由は二つある。一つはヘッジ戦略。主要航空会社の多くは、燃料コストの急変動を吸収するために先物などを使った価格ヘッジをかけている。今年前半はそのヘッジが効いていて、スポット価格の高騰が直接的な損益悪化につながりにくい状態にある。もう一つは需要の底堅さ。コロナ禍からの回復需要が続いており、旅客数は依然として高水準。需要がある限り、会社は簡単に路線を切れないという判断も働いている。

ヘッジが切れる秋以降、旅客への値上げは避けられないか

問題は、夏が終わった後だ。航空会社がかけているヘッジには期限がある。紛争が長期化して秋以降もジェット燃料の価格高騰が続けば、ヘッジの効果は剥落し、コスト増を丸ごと被るタイミングがやってくる。その時、航空会社が選べる選択肢は限られている――値上げか、減便か、あるいはその両方だ。

2026年夏便の価格はすでに高止まり気味だが、秋冬便の予約を考えている人にとっては、この先の動向を注視する必要がありそうだ。中東の飛行禁止区域が縮小しない限り、迂回コストは継続的にかかり続ける。

この先どうなる

鍵を握るのは、イランをめぐる軍事情勢がいつ落ち着くかだ。早期の停戦・緊張緩和が実現すれば、飛行禁止区域が縮小に向かい、ジェット燃料の需給も緩む可能性がある。一方、紛争が秋以降に長引けば、ヘッジ期限切れのタイミングと重なり、旅客への価格転嫁が本格化するシナリオが現実味を帯びてくる。今夏の旅行は「まだ何とかなる」水準かもしれないが、年末年始のフライト計画は早めに動いておいたほうがよさそうだ。