台湾武器売却凍結——その事実が公式の場で初めて認められたのは、米上院公聴会の証言台だった。総額140億ドル、日本円で約1兆4000億円に上る対台湾武器パッケージが「いったん停止」されていると、米海軍代行長官ハン・カオが明言したのだ。理由として挙げたのは、米・イスラエル共同作戦「エピック・フューリー」向けの弾薬確保。台湾ではなく、イランの空が優先順位を決めた格好になっている。

ハン・カオ証言の中身——「弾薬は十分ある、だが止める」

公聴会でハン・カオが語ったのは矛盾を孕んだ一文だった。

「現時点では、エピック・フューリー作戦に必要な弾薬を確保するため、いったん停止している。十分な量はある」

「十分ある」のに「止める」——この言い回しが引っかかった。純粋な弾薬不足の問題ではなく、政治的な優先順位の組み替えが起きているとみるのが自然だろう。ハン・カオ自身も「台湾側とは話していない」と認めており、当事者への説明より先に方針が固まっていたことになる。台湾総統府は「調整に関する情報は受け取っていない」と発表しており、事実上の通告なし停止という状況だった。

トランプが口にした「交渉カード」——習近平会談直後の文脈

もう一つ見落とせないのが、タイミングだ。トランプ大統領は先週、FOXニュースのインタビューで台湾への武器売却を「中国との非常に良い交渉カード」と表現した。その発言は北京での米中首脳会談直後のもので、習近平が台湾問題を最重要懸念として提起した直後でもあった。

エピック・フューリー作戦という軍事上の理由と、対中外交上の駆け引きという政治的理由が重なっているのがこの凍結の複雑さで、どちらが「本当の理由」かを切り分けるのは難しい。軍事的説明を前面に出しながら、外交的取引の余地を残す——そういう構図に見える。

台湾への武器売却は長年、中国が強く反発してきた問題で、北京は台湾を自国領土と主張し、武力行使も排除しないとしている。今回の凍結がどこまで「一時停止」にとどまるかは、エピック・フューリー作戦の推移と、米中交渉の行方に直結することになる。

この先どうなる

ハン・カオは「政権が適切と判断した時点で対外軍事売却は再開される」とも述べており、完全な白紙化ではないとされている。ただし「適切と判断した時点」という条件は、政治的裁量の余地を最大限に残した表現でもある。台湾側が正式な説明を求めるかどうか、また議会がこの凍結に反発するかどうかが当面の焦点になりそうだ。イラン情勢が長期化すれば凍結期間も延び、その間に米中交渉が進展すれば、武器売却が縮小・変質する可能性も否定できない。1兆4000億円分の軍事支援が、複数の外交テーブルで同時に値踏みされている状態——それが現状だ。