米イラン核協議が暗礁に乗り上げたまま、原油相場が3日ぶりに反発した。合意でも決裂でも市場が大きく動くシナリオが並存している状況で、投資家が「どちらに賭けるか」を決めきれていないのが正直なところらしい。

制裁が再び牙を剥けば、日量数百万バレルが消える

イランへの制裁が強化されて輸出が完全遮断された場合、世界市場から消える量は日量100〜300万バレル規模になるとみられている。サウジアラビアやUAEが増産で穴を埋めようとしても、即時対応には限界がある。ここが原油価格の下支えになっているわけだ。

一方で交渉が妥結に向かえば、制裁で凍結されていたイラン産原油が一気に市場へ流れ込む。原油価格の急落、そしてエネルギー輸入コストの低下——というシナリオが待っている。

「Oil Rises After Three-Day Drop With Iran-US Talks in Focus」(Bloomberg、2025年5月21日)

Bloombergの報道が「焦点(in Focus)」という言葉を使ったのは示唆的で、今の相場を動かしているのは実際の供給量ではなく、交渉の「空気感」だったりする。

欧米のインフレに直撃する「中東発の乱高下」

原油価格の急変が厄介なのは、エネルギー費用を通じてインフレ指標にすぐ響くからだ。FRBやECBがようやく利下げの出口を探り始めたタイミングで、中東の外交テーブルからエネルギーショックが飛び込んでくる可能性は小さくない。

イラン制裁の強化は対中イラン石油にも波及する。中国はイラン産原油の主要な買い手であり、制裁が強まれば中国の調達コスト上昇→製造コスト上昇→世界のサプライチェーンへの波及、という経路も頭に入れておく必要がある。

原油価格反発という一行ニュースの裏に、これだけの変数が詰まっているのが今の市場の姿だ。

この先どうなる

次のヤマ場は協議の「合意か決裂か」が公式に確認される瞬間だろう。米側は制裁維持を外交カードとして握り続けたいし、イラン側は経済的な苦境から早期合意を求める声も根強い。どちらが折れるかより、「折れたふりをしながら先延ばしする」展開が最も可能性が高いとみる向きもある。その場合、原油価格は方向感のない乱高下が続く。イラン制裁エネルギー供給の不透明感が長引けば、夏場のガソリン価格にも影響が出てくる——消費者が中東外交に無関係でいられなくなる局面は、案外すぐそこまで来ているかもしれない。