エルドアン大統領の名前が、またトルコ司法の判決と並んで世界に報じられた。トルコの控訴裁判所が最大野党・共和人民党(CHP)の2023年指導部選挙を無効と宣言したのは今週のこと。党首オゼル氏は「トルコ民主主義にとって暗黒の日」と断言し、アンカラの党本部前には数千人の抗議者が押し寄せた。
司法大臣ギュルレク、その前職とは何だったのか
今回の判決を読み解くうえで、どうしても気になった人物がいる。現司法相のアクン・ギュルレク氏だ。エルドアンが今年任命するまで、ギュルレク氏の肩書はイスタンブール主任検察官だった。その在任中、最も精力的に追いかけた標的がイスタンブール市長のエクレム・イマモール氏である。
イマモール氏はエルドアンの最大の政敵と目されてきた人物で、現在も拘束から1年以上が経過している。その起訴状を書いたのがギュルレク氏で、求刑は2,000年超の禁錮刑だったというから、数字のスケールだけで眩暈がする。その人物が今度は法相として、野党への司法介入を「民主主義への信頼を強化する」と擁護する立場にいる。
「私たちはトルコ民主主義にとって暗黒の日を経験している」──CHP党首オゼル氏(BBC Newsより)
CHP側は最高選挙委員会(YSK)にも異議を申し立てており、金曜日には同委員会が反論を審理する会合を開いたとされる。オゼル氏は法廷とYSKの両面で闘う構えを崩していない。
選挙で勝てないなら、法廷で消す──この一年のパターン
ここ数年のトルコ政治を振り返ると、一つのルーティンが浮かんでくる。エルドアンが苦手とする有力な野党政治家が現れる。するとほぼ間をおかずに捜査が始まり、起訴され、拘束されるか党の機能が損なわれる。イマモール氏のケースがその最も典型的な事例で、今回のCHP指導部無効化はその延長線上にあるように見える。
経済面への波及も無視できない。トルコリラと国内市場は政治的な混乱と連動して揺れる傾向があり、今回の判決も新たな不安定要因になり得ると各メディアが報じている。エルドアン政権が政治リスクを高めるたびに、そのツケを払わされるのはリラを持つ市民や中小企業という構図が続いている。
この先どうなる
CHP側の次の一手はYSKへの申し立てと法廷闘争の継続だが、司法の独立性への疑念が深まるトルコでその勝算をどう見るかは難しい。イマモール氏の裁判は依然進行中で、判決次第では2026年以降の選挙政治に直接影響する。国際社会、とりわけEUとアメリカがこの「司法クーデター」をどう名指しするかによって、エルドアン政権への外圧の強さが変わってくるだろう。静かに、しかし着実に、トルコの政治空間は狭まっている。