ワクチンが存在しないブンディブギョ株エボラが、外交日程まで吹き飛ばした。感染疑いはすでに600件、死者139人——WHOが国際的公衆衛生上の緊急事態を宣言してから数日も経たないうちに、インドとアフリカ連合は5月28〜31日にデリーで開く予定だったインドアフリカフォーラム首脳会議の延期を共同声明で正式に発表した。
600件・死者139人——ブンディブギョ株エボラが「封じ込め困難」な理由
今回の流行株であるブンディブギョ型は、2007年にウガンダ西部で初めて確認された希少種。感染者数で圧倒的な記録を持つザイール型とは別系統で、既存のワクチンが効かない点が最大の懸念材料になっている。
さらに厄介なのが地理的な条件だ。感染の震源地がコンゴ民主共和国と周辺の紛争地帯に重なっており、医療チームの現地入りも接触者追跡も思うように進まない状況が続いている。エボラウイルスは感染した動物(主にオオコウモリ)との接触をきっかけに人へ広がり、発症まで2〜21日の潜伏期間を経たあと、発熱・頭痛から臓器不全へと急速に悪化する。現時点でWHOが確認する感染疑い例はアフリカ大陸内に限られているものの、「国際的懸念」の宣言は事態の深刻さを物語っている。
インドアフリカフォーラム首脳会議、なぜ「今さら」10年ぶり開催だったのか
インドアフリカフォーラム首脳会議は第1回から第3回(2008・2011・2015年)まで順調に積み重ねてきたが、第4回はコロナ禍や政治日程の調整難航で先送りが続いた。今年こそ——という機運のもとデリー開催が決まっていただけに、直前の延期発表は関係者にとって痛手だったらしい。
「アフリカ大陸における新たな公衆衆衛生上の状況」を理由に会議を延期し、新たな日程は後日発表するとする共同声明を発表した。(インド・アフリカ連合 共同声明、2025年)
インドにとってアフリカは資源・インフラ投資・地政学的な影響力確保の観点で重要な舞台。中国が「一帯一路」でアフリカへの関与を深めるなか、インドが55カ国と正面から向き合える数少ない多国間の機会がこの会議だった。延期によって失う時間は、外交的に見れば小さくない。
この先どうなる
WHOが「国際的公衆衛生上の緊急事態」の指定を解除するには、28日間以上にわたって新規感染者がゼロで推移する必要がある。ブンディブギョ株向けのワクチン開発は研究段階にあるが、臨床応用まではまだ距離がある。紛争地帯での感染拡大が続く限り、収束の見通しは立てにくい状況だ。
インドアフリカフォーラム首脳会議の新日程は「後日発表」とされているが、エボラの封じ込めが長引けば今年中の再設定すら難しくなってくる。首脳会議が再び動き出すタイミングが、そのままエボラ収束の一つのバロメーターになりそうだ。