ルワンパラ病院の隔離テントが燃えた。エボラで死亡したとみられる若いサッカー選手の遺体を当局が接収した、ただそれだけのことが引き金だった。コンゴ東部イトゥリ州、2025年のアウトブレイク最前線でいま何が起きているのか——現場の証言を追った。
ルワンパラ病院で何が起きたか:放火・投石・警告射撃
地元の人気者だったという若い男性がエボラで死亡したとみられ、当局はウイルス拡散を防ぐために「安全埋葬」を理由に遺体を接収した。これが遺族と支持者たちの怒りに火をつけた。
地元政治家のLuc Malembe Malembeは現場をこう証言している。
「群衆は病院に向かって投石を始めた。隔離病棟として使われていたテントにも火を放った」
警察は警告射撃で群衆を解散させ、医療スタッフは軍の保護下に入った。石の投擲によって医療従事者1名が負傷したとAFPが伝えている。男性の母親は「息子が死んだのはエボラではなくチフスだ」とReutersに語っていて、遺族側と当局の認識のずれがいかに深かったかが見えてくる。
イトゥリ州アウトブレイク:「病気の現実を理解していなかった」
イトゥリ州の安全対応責任者ジャン・クロード・ムケンディはAPに対し、群衆は「病気の現実を把握していなかった」と述べた。エボラ感染者の遺体は死後も高い感染力を持つため、安全埋葬は拡散防止の要中の要とされている。
ただ、理屈はそうでも、愛する人の遺体を「奪われた」と感じた遺族に冷静を求めるのは容易ではない。コンゴ東部では過去にも地域住民と医療チームの対立がアウトブレイク対応を大きく遅らせた経緯がある。2018〜2020年のキブ州流行時にも医療施設への攻撃が相次ぎ、対応期間が長期化した——今回も同じ轍を踏む可能性がちらついている。
今回の騒乱はイトゥリ州でほぼすべての症例が報告されているブニア市近郊で発生した。感染者数が増加傾向にある中、地域の信頼なしにアウトブレイクを制御するのは難しいというのが専門家の共通見解だ。
この先どうなる
当面の焦点は二つ。ひとつは病院の機能回復。焼失した隔離テントの代替設備をどれだけ早く展開できるかで、隔離能力に直接影響が出る。もうひとつは地域コミュニティとの信頼再構築で、こちらは数日で解決できる話ではない。
コンゴ エボラ 2025の流行は、ウイルスとの闘いであると同時に「不信」との闘いでもあることを今回の騒乱が改めて示した。WHOやコンゴ保健省が住民への説明活動をどこまで強化できるか——医療テントが燃えた跡地で、それが問われている。