ミレイ経済改革が、最初の関門をクリアした。IMFは2025年5月21日、アルゼンチンへの約10億ドルの資金放出を正式に承認。220億ドル規模の融資枠における初回審査通過であり、Bloombergは「ミレイ政権にとって新たな勝利」と報じた。ただ、数字の裏側を掘ると、手放しでは喜べない事情が透けてくる。

280%インフレを「ゼロ財政」で叩いた18ヶ月

ミレイ大統領が就任したのは2023年12月。当時のアルゼンチンは年率280%超のインフレに沈んでいた。政権が打ち出したのは「財政赤字ゼロ」という、ほとんど信じてもらえなかった公約だった。

実際に何が起きたか。補助金カット、公務員削減、公共事業の凍結——とにかく歳出を削り続けた。その結果、インフレ率は鈍化傾向に転じ、財政収支は黒字圏へ。IMFが「審査通過」と認定したのはこの数字があってこそだろう。

ただし、改善したのは政府の帳簿だけじゃないかという疑問も残る。

貧困率50%超——誰がツケを払っているのか

アルゼンチン国民の実質賃金は依然として低迷したまま。貧困率は50%を超え、スーパーの棚の前で値段を確かめる人の列は今も消えていないらしい。

「IMFがアルゼンチンへの約10億ドルの資金放出を承認した。これはミレイ大統領が主導する経済改革プログラムに対する初の審査通過を意味し、220億ドル規模の融資枠における重要な節目だ」(Bloomberg、2025年5月21日)

アルゼンチン IMF融資の歴史を振り返ると、こういう構図は珍しくない。財政数字が整うほど、街の景気感とのギャップが広がる時期が必ず挟まる。緊縮策で外貨を確保しながら、社会の底が抜けないように綱渡りを続ける——それがIMF処方箋の古くて新しいジレンマだ。

アルゼンチン インフレの数字は改善された。外貨準備も積み上がりつつある。でも「統計が良くなった国」と「暮らしが楽になった国」は、時間軸がずれる。その差がどのくらい続くかが、ミレイ政権の次の試練になりそうだ。

この先どうなる

220億ドル融資枠の残額放出には、引き続き四半期ごとの審査がついて回る。次回審査では為替管理の段階的撤廃や労働市場改革の進捗が焦点になると見られている。ミレイ政権が外資の信頼をつなぎ止めながら、国内の不満をどこまで吸収できるか——その綱渡りは続く。ペソが安定し、実質賃金の回復が数字に出始めたとき、「改革は成功した」と言えるのかもしれない。それがいつになるかは、今のところ誰にも分からない。