金価格の高止まりが、なぜか「和平交渉の進展」で解消しない。通常なら地政学リスクが和らいだ瞬間に売られるはずの金が、むしろ水準を維持し続けている。その裏に、ちょっと意外な連鎖反応が隠れていた。

米イラン協議2026が「逆回転」で金を縛る

米・イラン協議が前進するたびに何が起きるか、順を追って確認してみると面白い。まず原油市場がホルムズリスクを織り込み解除して原油安に動く。するとインフレ圧力が弱まると判断したFRBが、利上げに踏み切りやすくなる。金利が上がれば、利回りを生まない金は相対的に魅力を失う——という話になるはずだった。

ところが金は売られない。なぜかといえば、協議が「まだ合意していない」からだ。戦争リスクは消えていないし、決裂すれば原油は急騰してインフレが再燃するシナリオも同時に生きている。投資家はその二つのリスクの間で、ポジションを傾けられない状態にある。

「米・イラン協議が利上げ見通しを不透明なままにする中、金価格は横ばいで推移し、投資家の間では利上げ観測が燻り続けている」(Bloomberg、2026年5月21日)

Bloombergが「投資家は戦争リスクと利上げリスクという二つの悪材料の間で身動きが取れない」と表現したのは、まさにこの綱引きを指している。どちらに解決しても金にとってマイナス材料になりうる、珍しい構図だ。

合意でも決裂でも「金融市場が揺れる」臨界点

断続的に続く米イラン協議は、現時点で合意か決裂か読めない段階にある。もし合意に至れば、原油安→利上げ観測強まる→金下落というシナリオが現実になる可能性がある。一方で決裂なら、中東緊張再燃→原油急騰→インフレ復活→金への逃避買い、という全く逆の動きも想定される。

FRBの利上げ観測は今この瞬間も「燻り続けている」状態で、どちらに転んでもトリガーが引かれる準備が整っている。個人投資家から機関投資家まで、金に絡むポジションを動かせない理由がここにある。

過去の事例を振り返ると、地政学リスクと金融政策リスクが同時に臨界点を迎えた局面では、解決直後に相場のボラティリティが一気に跳ね上がる傾向があった。今回も「静けさ」の後に来るものを市場は警戒しているらしい。

この先どうなる

米イラン協議が次のラウンドで何らかのシグナルを出した瞬間、金価格は一方向に動き始めるとみられている。合意寄りのニュースが出ればFRB利上げ観測が前面に出て金に売り圧力が加わり、決裂ならば逃避買いで再び上値を試す展開が想定される。どちらに転ぶにしても、今の「高止まり」は嵐の前の静けさと見ておいたほうがよさそうだ。金価格の動向を追うなら、次の協議の日程と原油市場の反応を同時に見ておくのが、今のところ一番確かなシグナルになるんじゃないかと思う。