ウクライナドローンが欧州の空をさまよっている——AP通信が報じたのは、そんな想定外の光景だった。キーウはロシアの石油輸出インフラを無人機で叩くことで戦費の源を断とうとしてきたが、その作戦の「余波」が今、同盟国との関係にひびを入れ始めている。
ロシア石油収入の30%超、その動脈を狙う作戦の現在地
ロシアにとって石油輸出は国家収入の30%超を稼ぎ出す生命線らしい。だからこそキーウは製油所やパイプライン関連施設へのドローン攻撃を繰り返してきた。戦場で押し返せなくても、カネの流れを絞れれば戦局は動く——そういう計算があったはずだ。
実際、2023年以降のウクライナによるロシア国内へのドローン攻撃は飛躍的に増えている。射程が延び、精度も上がった。しかし「上がった」とはいえ、完璧じゃない。GPSジャミングや電波妨害にさらされた無人機が制御を失い、意図しない方向へ飛んでいく事案がどうしても出てくる。
「キーウがロシアの石油輸出を標的にする中、欧州が迷走したウクライナのドローンに直面している」——AP通信
この一文が端的に示している通り、問題は「攻撃が失敗した」ことではなく、「失敗の着地点が同盟国の領土だった」ことにある。
ポーランド落下事案が示した「NATO領空侵犯」の重さ
前例はすでにある。2022年11月、ポーランド東部プシェウドウに落下した物体をめぐって一時、NATO第5条の発動が議論された。結果的にはウクライナの防空ミサイルとされ、外交的決着は「事故」で収まったが、あの緊張感は関係者の記憶にまだ残っているはずだ。
今回の「迷走ドローン」問題はそれに似た構図を持つ。加盟国の領空に無断で侵入するという行為は、たとえ意図的でなくても主権侵害として処理される。ロシア石油輸出攻撃を支持するNATO各国も、自国の空が戦場に巻き込まれることには別の反応を示す。
ウクライナへの支援疲れが一部で語られる中、同盟国が「忍耐の限界」を口にし始めたら、それは兵器支援の縮小という形で跳ね返ってくるかもしれない。無人機NATO領空侵犯は、単なる技術的失敗以上の意味を持つ出来事になりつつある。
この先どうなる
キーウとしては、ロシア石油輸出攻撃の手を緩める選択肢はとりにくい。戦費を削る有効な手段がほかにないからだ。一方で同盟国の信頼を損なえば、長期的な支援の継続が怪しくなる。
今後注目されるのは、ウクライナが電波妨害対策や帰還プログラムの精度向上をどこまで急げるか、そしてNATOが「迷走ドローン」に対してどこまで公式に問題提起するかだろう。今のところ各国は表立った批判を避けているが、事案が積み重なれば外交ルートでの圧力は強まっていく。精度が外交カードになるとはこういうことで、戦争の正念場が戦場の外側でも始まっている。