ホルムズ海峡を通過する船が、今や「通行料」を求められるケースが出てきているらしい。ロイターが報じたこの話、最初は大げさに聞こえたが、調べると背景がかなり深かった。イランはこの海峡を、静かに、しかし着実に自分の庭にしようとしている。

アブムーサ島に何が建った? 三段構えの支配戦略

イランが使っている手口は三段構えだ。まず、アブムーサ島など海峡周辺の戦略的島嶼に検問拠点を設けた。ここで通過船舶を止め、確認作業を行うという。次に、湾岸の近隣諸国と外交協定を結び、周囲を固める形をとっている。そして三つ目が、一部の船舶からの「通行料」徴収。公式な関税でも国際法上の通航料でもない、グレーゾーンの費用請求だ。

「イランはホルムズ海峡の支配を、島嶼部のチェックポイント、近隣諸国との外交協定、そして時に通行船舶への『通行料』徴収を通じて強化しつつある」(Reuters、2026年5月21日)

ホルムズ海峡を通過する原油は1日あたり2100万バレル超。世界の石油貿易量の約20%がここを通る。サウジアラビア、イラク、クウェート、UAE、いずれの産油国も輸出の大半をこの水道に依存している。イランの島嶼支配が進めば、これらの国は事実上、イランの「許可」なしに輸出できない状況に近づく。原油輸送リスクという言葉が一気にリアルな話になってくる。

核交渉の行方と「最後の切り札」の使い方

タイミングが絶妙すぎる、という見方もある。現在、米国とイランの核交渉は決裂寸前と伝えられている。その局面で、イランがホルムズ海峡の実効支配を強化している。これは偶然というより、交渉カードの積み増しと読むのが自然じゃないか。

実際、イランはこれまでも制裁圧力が強まるたびに「海峡封鎖」をちらつかせてきた。今回の動きは封鎖ではなく「管理」という形をとっているが、それがかえって厄介なところだ。封鎖なら国際社会は即座に対応できる。しかし「検問」「協定」「通行料」という形だと、どこで線を引くか曖昧になる。米国やEUが明確に「違反」と断じにくい形で、じわじわと支配を深める手法といえる。

この先どうなる

核交渉が今後どう転ぶかによって、ホルムズ海峡の緊張度は一気に変わりうる。合意に至れば、イランは海峡カードを手放す代わりに制裁緩和を得るシナリオが描ける。一方、交渉が完全に崩れた場合、島嶼チェックポイントの運用が強化され、通行料徴収が常態化する可能性も否定できない。その先には原油輸送リスクの急騰、ひいては原油価格の跳ね上がりが待っている。グローバルサプライチェーンにとって、ホルムズ海峡はこれまで以上に「目が離せない場所」になった。米国の出方、そしてサウジやUAEがどこまでイランに譲歩するかが、次の焦点になりそうだ。