ホルムズ海峡閉鎖が現実になった場合、世界は2008年のリーマン・ショックに匹敵する景気後退に突入する——エネルギー調査会社ラピダン・エナジーがそう警告した。日量1700万バレル、世界の石油輸送量の約20%が通過する「咽喉部」が塞がれたとき、何が連鎖するのかを追った。

原油150ドル超、インフレ再燃——ラピダンが示した最悪シナリオ

ラピダン・エナジーの試算によれば、ホルムズ海峡が封鎖されれば原油価格は短期間で1バレル150ドルを超えるという。現在でさえ物価高の余波が残る各国経済にとって、このレベルのエネルギー価格は致命的な打撃になりかねない。

中央銀行にとっても頭が痛い話で、利下げサイクルに入りかけていたタイミングで再びインフレが跳ね上がれば、金融政策を根本から書き直す必要が出てくる。「スタグフレーション」という言葉が再び市場の語彙に戻ってくるかもしれない局面だ。

「Hormuz Closure Threatens Recession Rivaling 2008, Rapidan Says」——Bloomberg, 2025年5月21日

OECDはすでに成長の下押しとインフレの同時圧力を警告しており、G7財務相もパリで財政規律の即時強化を訴えた。つまり主要国の政策当局は、ホルムズが封鎖される前から手札が減りつつある状態にある。

米30年債5.1%超——緩衝材が薄い今、追加ショックの余地はあるか

調べてみると、ここに引っかかるポイントがある。米30年債利回りがすでに5.1%を突破した現状で、さらなる原油ショックが重なった場合の余波は、2008年とは別の経路をたどる可能性がある。

リーマン・ショック当時は金利の引き下げ余地が十分にあった。だが今は違う。財政余力も金融政策の余地も2008年より明らかに薄い。ラピダン・エナジーが「2008年級」と表現したのは恐怖を煽るためじゃなく、当時と現在の緩衝材の乏しさが重なるからだろう。

2008年景気後退の再来という言葉は重い。ただ、それが「起きる」という予言ではなく「起きうる」という試算であることは念頭に置きたい。リスクの輪郭を知っておくことと、パニックになることは別の話だ。

この先どうなる

ホルムズ海峡の地政学的緊張は、イラン核交渉の行方と直結している。交渉が合意に向かうなら封鎖リスクは後退し、原油市場も落ち着きを取り戻す展開が見込める。一方、交渉が決裂し軍事的な緊張が高まれば、ラピダンのシナリオが現実味を帯びてくる。エネルギー市場と金融市場の両方が、イランをめぐる外交の動向を固唾をのんで見守っている状況はしばらく続きそうだ。