ペルシャ湾海峡庁という聞き慣れない組織が、今週、世界のエネルギー地図を塗り替えようとする地図を公表した。主張する管轄範囲は2万2000平方キロメートル。しかもその境界線はオマーンとUAEの領海を堂々と食い込んでいる。

「通過には許可が必要」——ホルムズ海峡をめぐる2.2万km²の争い

イランが新たに設置したペルシャ湾海峡庁は、ホルムズ海峡の通過について「同庁との調整と許可が必要」と通告している。世界の原油輸送量の約20%が通過するこの海峡を、事実上の「イラン内水」として扱おうという話だ。

国連海洋法条約(UNCLOS)では、外国船舶の無害通航権が保障されている。ただしイランはこの条約を批准していない。その「抜け穴」を最大限に活用する形で、今回の宣言が設計されているように見える。

「イランは軍事的敗北から生まれた新たな現実を押しつけようとしているが、ホルムズ海峡の支配やUAEの海洋主権への侵害は、夢の断片に過ぎない」——UAE大統領外交顧問、アンワル・ガルガシュ氏(BBC Verifyより)

米国も即座に動き、自国船舶に対してイランの規則に従わないよう通達を出した。強硬な宣言に対して、アメリカとGCC諸国が同調して跳ね返すという、これまでと同じ構図が繰り返されている。

IRGCがタンカー攻撃映像を公開——「制裁」と呼ぶ理由

言葉だけではなかった。今週、IRGC系メディアはホルムズ海峡内のタンカーへの「制裁的攻撃」とする映像を公開した。BBC Verifyの分析によれば、映像に映る船舶の特徴は、リベリア船籍のタンカー「Barakah」と一致するという。

「制裁的攻撃」という言い方が引っかかった。軍事行動ではなく「制裁」と位置づけることで、海峡庁の「管轄権」行使を既成事実として積み上げようとしているように読める。宣言と実力行使を組み合わせた、じわじわと現実を動かすやり方だ。

ホルムズ海峡封鎖が現実になれば、原油価格への影響は即日かつ甚大なものになりうる。ただ現時点では、米国とGCC諸国の強い拒絶があり、全面的な封鎖には至っていない。

この先どうなる

イランが管轄権の主張を引っ込める気配は今のところない。むしろ攻撃映像の公開というエスカレーションを選んでいる。米海軍の存在感が維持される限り、全面封鎖は難しい——とはいえ、タンカー攻撃の「常態化」が進めば、保険料や迂回コストを通じて原油市場に静かな上昇圧力がかかってくる可能性はある。ペルシャ湾海峡庁という新設組織が、次にどんな地図を描くかが当面の注目点だ。