イースト・パレスティン脱線事故から2年以上が経つのに、肝心の法律はまだ存在しない。2025年、トランプ前大統領がトゥルース・ソーシャルに投稿したのは、共和党のトロイ・ネルズ下院議員への感謝の言葉だった。短い一文だが、長らく動かなかった鉄道安全立法に、再び光が当たった瞬間でもある。
2年間、被災地に届かなかった法律
2023年2月3日、オハイオ州イースト・パレスティン近郊でノーフォーク・サザン鉄道の貨物列車が脱線。塩化ビニルなど有害化学物質が流出し、住民は避難を余儀なくされた。その後も体調不良を訴える声は絶えず、地下水や土壌への汚染懸念はいまも消えていない。
事故直後、超党派でRailway Safety Actの立法化が動いた。ネルズ議員はその旗振り役の一人で、脱線検知システムの義務化や危険物輸送の規制強化を盛り込んだ法案を推進してきた。ところが上院では何度も審議が止まり、成立に至らなかった。背景にあるのは鉄道業界のロビー活動で、規制コストの増大を嫌った業界団体が組織的に抵抗してきたとされる。
「イースト・パレスティンの市民と鉄道安全のために戦ってくれた偉大なトロイ・ネルズに感謝する」— ドナルド・トランプ(トゥルース・ソーシャル)
この投稿が出たのは、ネルズ議員が再び法案推進に動いているタイミングだった。大統領経験者の後押しが、上院での審議を動かす圧力になるかどうか、政治的な重さは軽くない。
ロビーvs.被災住民、勝つのはどちらか
鉄道安全をめぐる構図は単純じゃない。Railway Safety Actが目指す脱線検知センサーの義務付けや危険物タンク車の基準強化は、鉄道各社にとって数十億ドル規模のコストになりうる。業界側は「既存の規制で十分対応できる」という論理で抵抗を続けてきた。
一方、イースト・パレスティンの住民にとっては2年以上が「待ち続けた時間」だ。連邦政府の補償や浄化作業は進んでいるが、根本的な再発防止策がないまま、また同じことが起きると感じている人は少なくないらしい。トランプの投稿はそういう住民感情に刺さる内容でもある。
共和党内では「規制強化は小さな政府の原則に反する」という声もある。ネルズ議員がどこまで党内をまとめられるか、そして上院共和党のリーダーシップが法案を日程に乗せるかどうかが、今後の焦点になってくる。
この先どうなる
トランプの支持表明は象徴的だが、法案成立には上院での60票確保という壁が残っている。民主党の協力なしには乗り越えられないラインで、超党派の合意形成が必要になってくる。2023年に一度は超党派で動いた経緯があるだけに、ゼロから始まるわけではない。ただ、鉄道ロビーの資金力と議会への影響力は依然として健在で、「政治的追い風があれば通る」ほど単純でもないのが実態だ。イースト・パレスティンの住民が固唾を呑んでいる、その視線の先がどこへ向くか。次の動きは議会の夏会期前後になりそう。