ジェイミー・ダイモンが、市場の空気を読まずに口を開いた。30年米国債利回りが2007年以来の高水準に迫り、投資家の多くが「ピーク金利はそろそろ」と信じ始めていたタイミングでのことだ。JPモルガンのCEOはBloombergの取材に対し、「金利はここからさらに大幅に上昇し得る」とはっきり語った。債券売りはまだ序章に過ぎないかもしれない、というわけだ。
ダイモンが怖がっているのは「財政の穴」だった
今回の警告の根っこにあるのは、金融政策というよりも財政の話らしい。米国では財政赤字の拡大が続き、政府は国債を増発し続けている。さらにトランプ減税の延長が現実味を帯びてきたことで、その規模はさらに膨らむとみられている。
問題は「誰が買うか」というところ。これまで米国債の安定した買い手だった外国政府や中央銀行が、地政学リスクや通貨防衛を理由に売り手に転じるリスクは、今もくすぶったまま。需要が細れば、利回りは需給の力で押し上げられる。ダイモンが懸念しているのはおそらくそこじゃないか、と読める。
「金利はここからさらに大幅に上昇する可能性がある」――ジェイミー・ダイモン(Bloomberg、2026年5月21日)
米国債利回りの上昇は、単なる債券市場の話では終わらない。住宅ローン金利は米国債利回りに連動して動くし、企業の借入コストも上がる。新興国では、ドル建て債務の返済負担が重くなり、資本流出が加速するシナリオも頭をよぎる。金融引き締めの連鎖が、実体経済に遅れて効いてくる——というのがダイモン警告の一番嫌な読み方だ。
「まだ上がる」が本当なら、影響はここまで広がる
住宅市場はすでにきつい。米国では30年固定ローン金利が高止まりしており、購買力が落ちた買い手が市場から抜けている。ここから米国債利回りがさらに上昇すれば、住宅ローン金利の一段の上昇は避けられない。
企業側も楽じゃない。低金利時代に積み上げた債務の借り換えが、より高い金利水準でのし上がってくる。体力のある大企業はともかく、中小や高レバレッジ企業には直撃になる。米国債利回りの上昇が長引けば、信用市場にひびが入るリスクも出てくる。
新興国はさらに厳しい立場に置かれる。ドル高と金利上昇のダブルパンチは、2013年の「テーパータントラム」を思い起こさせる。あのとき、多くの新興国市場が急落した。今回の規模感がどこまでかは見えないが、脆弱な国々への資本流出圧力は高まりつつある。
この先どうなる
ダイモンの発言は、FRBの利下げ期待で楽観に傾いていた市場に冷や水だった。6月のFOMCに向けて、市場の金利見通しがまた揺れ始める可能性はある。財政赤字と国債増発という構造的な重しが残る以上、「利回りのピーク」を確信するのはまだ早い——というのが今の正直なところだろう。ダイモンが外れてくれればそれでいい。ただ、この人の読みが当たってきた場面は、思い返すと少なくなかった。