エクソンモービルが、ベネズエラの国営石油会社PDVSAとの交渉を「最終局面」に入れたとニューヨーク・タイムズが報じた。2007年、チャベス政権の国有化政策によって同国から事実上追放されてから約18年。あの「社会主義による接収劇」に、ようやく決着がつこうとしている。
チャベスに奪われた油田、18年越しの返り咲き
当時のいきさつを振り返っておきたい。2007年、チャベス大統領はオリノコ川流域の巨大油田地帯を国有化し、エクソンをはじめ欧米の石油メジャーを次々と締め出した。エクソンは国際仲裁に持ち込み、最終的に10億ドル超の補償を勝ち取ったものの、油田そのものへのアクセスは失ったままだった。
その後、マドゥロ政権下での経済崩壊と米国の制裁が重なり、ベネズエラの原油生産量は最盛期の日量300万バレル超から一時は50万バレル台にまで落ち込んだ。世界最大の確認埋蔵量を持ちながら、それを掘り出せない国という皮肉な状態が続いてきた。
「米石油大手がベネズエラでの原油採掘に向けた交渉を進めており、社会主義政権との対立に終止符を打ち、トランプ大統領の勝利を示す動きとなっている。」(ニューヨーク・タイムズ)
今回の交渉が成立すれば、エクソンは長期間凍結されていたベネズエラ資産へのアクセスを実質的に回復することになる。PDVSAにとっても、老朽化した設備と資金不足を外資の技術・資本で補える、数少ない選択肢のひとつだろう。
トランプ政権が描く「中東を頼らない」エネルギー地図
この動きの背後にあるのが、対イラン制裁の強化だった。ホルムズ海峡を通る中東産原油への依存度を下げたいトランプ政権にとって、地理的に近くて埋蔵量が豊富なベネズエラは、いわばバックアップ電源みたいな存在らしい。
トランプ・エネルギー戦略の柱は「米国とその友好国による西半球エネルギー圏の構築」とも言い換えられる。カナダのオイルサンド、ガイアナの新興油田、そしてベネズエラの超重質油——これらをひとつのネットワークとして束ねられれば、中東情勢がどう転んでも米国の調達ルートは揺るがない。エクソンのベネズエラ参入は、その地図の「欠けたピース」を埋める一手でもある。
もっとも、マドゥロ政権が本当に契約を履行できるかどうかは別問題だ。インフラの劣化、汚職、外貨不足——現場で何が起きているかを考えると、交渉妥結がそのまま「増産」に直結するとは言いにくい部分もある。
この先どうなる
合意が正式に発表されれば、欧州の石油メジャーやアジア系企業にもベネズエラ再参入の空気が広がる可能性がある。一方、米議会内には「独裁政権との取引」として反発する声もあり、制裁の枠組みをどう修正するかが次の焦点になりそうだ。ベネズエラ側も、外資が戻ってくるなら政治的なカードを切るタイミングを探ってくるだろう。エクソンとPDVSAの契約文書よりも、トランプ政権がどこまで制裁を緩和する気があるのか——そっちの方が、今後の原油市場には効いてくるんじゃないか。