ECB利下げ2024——その号砲が6月に鳴る可能性が、一気に高まった。欧州中央銀行は政策金利を過去最高水準で据え置いたものの、ラガルド総裁が会見で「データが示す方向は明確だ」と踏み込み、市場は即座に反応した。コロナ禍の歴史的利上げサイクルに、終止符が打たれようとしている。

インフレ2%台前半——ECBが動く「条件」はもう揃っていた

ユーロ圏のインフレ率は、ピーク時の10%超から急速に鈍化し、すでに2%台前半まで落ちてきた。ECBが目標に掲げる2%まで、もう指一本分の距離じゃないか——そう感じさせる数字だ。

ラガルド総裁は「利下げは既定路線ではない」と釘を刺しつつも、6月会合に向けて追加データを精査するとも述べた。言い換えれば、よほどのサプライズがない限り、6月が転換点になるという読み筋がほぼ固まりつつある。

「欧州中央銀行は木曜日、政策金利を過去最高水準で据え置いたが、ユーロ圏のインフレが2%目標に向けて鈍化し続けるなか、早ければ6月の利下げに道を開いた。」(The Associated Press)

ラガルドの金融政策がここまで明確なトーンを帯びるのは珍しい。それだけユーロ圏の物価データへの自信が増しているということらしい。

ドイツ経済の底上げか、ユーロ安の罠か——2つのシナリオ

ECBが利下げに踏み切ると、まず住宅ローン金利と企業向け融資コストが下がる。停滞が続くドイツ経済にとって、これは久々の追い風になりうる。製造業の設備投資が動き始めれば、ユーロ圏全体の回復感が出てくるかもしれない。

ただし、そう単純でもない。FRBは利下げに慎重な姿勢を崩していない。ECBが先に動けば米欧の金融政策の乖離が広がり、ユーロ安が加速する。そうなると輸入品の価格が再び上がり、せっかく沈静化したインフレが再燃するリスクが出てくる。

ユーロ圏インフレの「最後の一マイル」と呼ばれるサービス価格の粘着性も、まだ完全には解消されていない。ラガルドが釘を刺したのは、こうしたリスクシナリオを頭に置いているからだろう。

この先どうなる

次の焦点は6月6日のECB理事会。それまでに出てくる4月・5月のインフレ統計と賃金データが、事実上の「引き金」になる。データが想定通りなら、ECBは10年超ぶりとなる利下げサイクルの第一歩を踏み出す可能性が高い。

一方でFRBが利下げを先送りし続けた場合、ユーロドルの行方次第では市場のシナリオが一気に書き直されることもある。6月まで、目を離せない2ヶ月が続く。