リトアニア ドローン警報が発令された火曜日、首都ヴィリニュスは数時間にわたって機能停止に近い状態に追い込まれた。ナウセーダ大統領とルギネーニェ首相が緊急シェルターへ退避し、議会の地下室には議員と職員が続々と誘導された。飛行停止命令、道路・鉄道の一時遮断——ここまで一斉にインフラが凍りついた事例は、バルト三国の近代史でも異例の部類に入る。
NATOが緊急スクランブルしても「見つけられなかった」という事実
今回いちばん引っかかったのは、NATO戦闘機が捕捉できなかったという点だ。
「リトアニアの国家危機管理センターは、ベラルーシ国内で目撃されリトアニア方向へ飛行していたドローンへの対応として警報を発令したと述べた。センターはドローンの出所は確認されていないと付け加えた。リトアニア軍はその後、NATOの戦闘機を撃墜のため出動させたが、ドローンを発見できなかったと発表した。」(BBC News)
つまり、脅威は「あったかもしれない」ままで警報が解除されている。ベラルーシ方向から飛来したとされるが、出所も最終的な行方も不明。NATO加盟国の防空網がスクランブルをかけて空振りに終わるのは、単純な失敗談じゃない。低高度・低速のドローンはレーダーに映りにくく、戦闘機との速度差が逆に捜索を難しくするという技術的な盲点が、そのまま表面化した形だ。
バルト三国でドローン侵入が「3連続」した週
前日のエストニアでの出来事も見落とせない。エストニア当局はNATOの戦闘機がドローンを撃墜したと発表し、ロシアの電子妨害によってコースを外れたウクライナのドローンだった可能性があると説明した。そしてラトビア、リトアニアと続く形で、バルト三国NATO加盟国での侵入事案が短期間に集中している。
偶発なのか、意図的なプレッシャーなのか、現時点では断定できない。ただ、三カ国すべてがロシアに隣接またはベラルーシと国境を接するNATO加盟国であり、ウクライナ戦争の長期化で電子戦・ドローン戦の「余波」が周辺国へ漏れ出しているのはほぼ確かだろう。ベラルーシ ドローン侵入の文脈で見れば、ルカシェンコ政権がロシアの前線基地的な役割を担っている構図とも重なってくる。
NATO加盟国の防空という観点から言うと、対ドローン防衛は対航空機防衛とは別の能力が求められる。今回の「空振り」は、その整備がまだ追いついていないことを示す証拠として各国の安保当局者に記憶されるはずだ。
この先どうなる
NATOはバルト三国でのドローン防衛を強化する圧力にさらされるのは間違いない。迎撃ではなく早期探知・識別のレイヤーを増やす議論が加速しそうだ。一方、今回のドローンの正体が最終的に「不明のまま」で処理されれば、次の侵入への抑止力は働かない。リトアニア、エストニア、ラトビアの三カ国は個別の対応に限界があるため、NATO全体での統合防空体制の見直しが近く議題に上ってくるんじゃないか。ヴィリニュス上空の「見えなかった機体」が問いかけているのは、実はそこだ。