NATO外相会議の会場に、ルビオ国務長官の姿があった。場所はトルコ・アンタルヤ。ただ、欧州の外相たちが用意していたのは歓迎ではなく、積み上げてきた疑念だったらしい。「米軍は本当にここにいてくれるのか」——その問いが、会議室に静かに漂っていたとAP通信は伝えている。

欧州が恐れる「静かな撤退」——ウクライナ支援から見えた亀裂

トランプ政権が発足して以降、欧州首脳たちが繰り返し確認を求めてきたのはウクライナ支援の継続性だった。武器供与の減速が取り沙汰されるたびに、NATO内では「次は自分たちか」という空気が広がってきた経緯がある。

加えて、イラン核交渉で米国が欧州をほぼ蚊帳の外に置いたまま単独で動いたことも、不信感に油を注いだ格好だ。集団で判断するはずの同盟が、ワシントンの一存で動く——その既成事実が積み重なっている。

「マルコ・ルビオ国務長官は、トランプ政権下での米国の信頼性、欧州大陸における米軍の将来、そしてイランの核をめぐる膠着に対して欧州の不安が高まる中、トルコで開催されるNATO外相会議へ向かっている。」(AP通信)

AP通信がこの一文を書いたとき、「信頼性」という言葉をあえて先頭に置いている点が引っかかった。安全保障の話ではなく、信用の話として整理している。それだけ問題が深いってことでもある。

分担金圧力80年目の亀裂——NATOが抱える「構成員」問題

トランプ政権はNATOへの分担金増額を欧州に繰り返し迫ってきた。GDP比2%目標の達成状況を公然と批判し、「払わないなら守らない」とも受け取れる発言が出たことも一度や二度ではない。

冷戦後に形成された集団防衛の枠組みは、「アメリカが最終的に守る」という暗黙の前提で動いてきた。その前提が今、政権の政策判断ひとつで揺らぐ場面を欧州は何度も目撃してきた。ドイツが防衛費を急増させ、フランスが「欧州の戦略的自律」を唱え始めたのは、その裏返しでもある。

ルビオ長官が会議でどんな言葉を並べたとしても、欧州側がそれを「保証」として受け取れるかどうかは別問題だ。信頼は声明一本で取り戻せるものじゃない、というのが今の欧州の率直なところだろう。

この先どうなる

NATO外相会議での合意内容がどう公表されるかが、まず注目点になる。欧州各国が求めているのは口約束ではなく、駐留米軍の規模や予算の裏付けだ。ルビオ長官が具体的な数字を持ち帰れなければ、欧州側の独自防衛力強化の動きはさらに加速するとみられている。

イランの核交渉がどう着地するかも、NATO内の米欧関係に直結する。欧州が蚊帳の外に置かれたまま米イラン間で何らかの枠組みができれば、「同盟の中の単独行動主義」への批判は一段と強まりそうだ。秋の欧州首脳会議に向けて、水面下の交渉はすでに始まっているはずで、その結果次第で同盟の形そのものが変わり得る局面に来ている。