ベン・グビルが自らスマホを持ち、跪かされた活動家たちの前で笑顔を見せた——その動画1本が、英仏米イタリアカナダの5か国を動かし、さらに連立政権の内側まで揺さぶった。
430人拘束、50隻制圧——グローバル・スムード・フロティラ阻止の現場
月曜早朝、イスラエル海軍のコマンド部隊がキプロス西方約460キロの国際水域に展開した。トルコを出港した50隻超の船団、グローバル・スムード・フロティラが目標だった。40か国以上から430人が乗り込んでいたとされ、ガザへの象徴的な物資を積んで航行していたところを制圧された格好だ。
イスラエル側は「ハマスに奉仕するPRスタント」と切り捨てたが、拿捕の瞬間を捉えた映像や活動家たちの証言が次々と拡散し、国際世論はすでに動き始めていた。
「両手を後ろ手に縛られて跪く活動家たちを嘲弄する自身の動画を投稿した」(BBC News報道より)
問題の動画を投稿したのは国家安全保障大臣のイタマル・ベン・グビル本人。政府高官が拘束中の市民を嘲笑する映像を自ら公開するのは異例中の異例で、批判の火に油を注いだ。
ネタニヤフまで批判——右派連立政権に走る亀裂
英仏米などが矢継ぎ早に非難声明を出したのと同日、ネタニヤフ首相が「イスラエルの価値観に沿っていない」と閣僚を名指しに近い形で批判した。これがかなり珍しいシーンだった。
ベン・グビルは長年、入植推進・強硬治安政策の象徴として右派連立の核を担ってきた人物だ。その人物を首相自身が公の場で窘めるのは、外交圧力が内政にまで浸透してきたサインと見ていいんじゃないか。ガザ海上封鎖の正当性をめぐっては、欧米との亀裂がすでに数か月単位で積み重なっている。
活動家を代理する権利団体は430人全員の即時釈放を要求。イスラエルは2人を除き解放したとも報じられているが、残る2人の扱いについては情報が錯綜している状況だ。
この先どうなる
グローバル・スムード・フロティラの船団は沈んでも、この一件が残した政治的な波紋は消えそうにない。欧米5か国の非難声明は「外交儀礼上の抗議」にとどまる可能性が高いが、ガザ海上封鎖の是非をめぐる国際法上の議論はむしろ再燃するだろう。国際司法裁判所やEUレベルでの制裁議論に材料を与えた格好でもあり、イスラエルの孤立感がじわりと深まる展開が続きそうだ。ベン・グビルが動画を削除したかどうか——そこも今後の焦点になってくる。