トランプ イラン攻撃延期——この判断が公になったのは、実際に攻撃命令が出る寸前だったからこそ重い。トランプ大統領は「非常に大規模な攻撃」を自ら止めたと認めた上で、イランが数日以内に核交渉へ戻らなければ実行に踏み切ると警告している。猶予を与えた、ということは交渉の窓がまだ開いているということでもある。ただ、その窓がいつ閉まるかは誰も分かっていない。
パキスタン仲介 核交渉、土壇場の「橋渡し」
現在、両国の間に入っているのはパキスタンだ。核保有国でありながらアメリカとも一定の関係を維持するパキスタンは、こういう局面で独特の立ち位置を持つ。パキスタン仲介による核交渉が実際にどこまで進んでいるかは表に出ていないが、延期という決断が出た背景にこの外交チャンネルが機能していた可能性は十分ある。
イラン側はこれまで「交渉条件が整っていない」というスタンスを崩していなかった。それが「数日」という期限付きの圧力を前にどう動くか。強硬派と穏健派の綱引きが、テヘランの内部でも続いているとみられている。
「トランプ大統領はイランに対し『さらなる大規模攻撃』を警告し、同国が交渉の席に戻るまで数日しかないと述べた。」(ドナルド・J・トランプ / The New York Times)
この発言が出たタイミングは意図的だったとも読める。攻撃を「やめた」ことを自ら公表するのは、軍事行動より外交解決を優先したいというシグナルになりうる。もちろん、圧力を最大化する演出という見方もできるが。
ホルムズ海峡 原油リスク——世界の20%が一瞬で詰まる
仮に攻撃が実行された場合、最も直接的な影響が出るのはホルムズ海峡だ。世界の原油輸送量の約20%がこの海峡を通過している。イランが報復として海峡を封鎖、あるいは機雷を敷設するシナリオは以前から繰り返し検討されてきた。
原油価格への影響はほぼ即日で出るとみられている。過去の中東緊張局面でも、ホルムズ封鎖の「懸念」だけで1バレル10ドル超の急騰が起きたことがある。今回は核施設への直接攻撃というより深刻なシナリオなだけに、エネルギー市場の反応は過去の比較にならない可能性もある。
日本にとっても他人事じゃない。中東依存度が高い日本の原油調達は、ホルムズ海峡の動向と直結している。円安が続く局面でのエネルギー価格急騰は、物価への二重打撃になりかねないらしい。
この先どうなる
パキスタンが橋渡しを続ける中、イランが「数日」以内に何らかの回答を出すかどうかが当面の焦点だ。交渉復帰を表明すれば軍事的緊張は一時的に下がるが、核開発の実質的な進捗をどこまで止められるかという根本問題は残る。
逆に期限が過ぎても動きがなければ、トランプが再び攻撃の言葉を持ち出す展開も現実的だ。ただし実際に攻撃に踏み切れば、中東全体の安定と原油市場の両方に取り返しのつかない影響が出る。延期という判断が「最後の外交カード」として機能するかどうか——答えは数日以内に出る。