米イラン核協議が「最終段階」に入ったとトランプ大統領が発言した瞬間、WTI原油先物は約3%下落した。外交の一言が、タンカーが列をなすホルムズ海峡よりも速く、市場を動かした格好だ。
WTI3%安の裏にあるホルムズ海峡の数字
ホルムズ海峡は世界の原油輸送量の約20%が通過する。日量に換算すれば1700万バレル超。ここが詰まれば、アジアの製油所が止まり、欧州の燃料価格が跳ね上がる——それほどの咽喉部だ。
イランへの制裁が解除されれば、現在市場から締め出されている日量数百万バレル規模の供給が戻ってくる可能性がある。それが原油安の読みを加速させた。インフレ圧力が和らぐという連想も、株式市場に追い風として働いた。
「トランプ氏がイランとの協議が『最終段階』にあると発言し、原油相場が下落した」(Bloomberg、2025年5月)
ただし、「最終段階」という言葉は以前も使われた経緯がある。市場が反応しつつも、合意内容の確認を待っているのはそのためだろう。
合意の中身次第で中東の均衡が変わる
核開発の制限水準をどう設定するか——ここが最大の焦点らしい。ウラン濃縮の上限が甘ければ、イスラエルとサウジアラビアが黙っていない。どちらも独自の対抗措置を取り得る立場にある。
WTI原油急落は「合意実現」を織り込んだ動きだが、ホルムズ海峡供給リスクが完全に消えたわけじゃない。核合意が崩れた2018年以降の原油乱高下を振り返れば、「最終段階」という言葉を額面通りに受け取るのは少し早い気もする。
エネルギーアナリストの間では、合意に至ったとしても制裁解除の実施スケジュールは段階的になるとの見方が多い。つまり供給が一気に戻るシナリオは、現時点では楽観的すぎるかもしれない。
この先どうなる
最も注目すべきは、協議の「中身」が表に出てくるタイミングだ。ウラン濃縮の上限値、査察体制、制裁解除の段取り——この三点セットが明らかになれば、原油市場の次の動きが読めてくる。
米イラン核協議が本当に合意に達すれば、WTI原油はさらに下値を試す展開もありうる。一方で交渉が再び膠着すれば、ホルムズ海峡供給リスクへの警戒が戻り、相場は反転する。どちらに転んでも、ガソリン代から航空運賃まで、生活コストへの影響は避けられない。「最終段階」の次の一手を、引き続き追っていく。