G7財務相会合が5月19日にパリで緊急招集された。理由はひとつではなく、三つの波が重なったからだった。イラン紛争に端を発したエネルギー価格の高騰、対応策として各国が競うように積み上げる防衛費、そしてサプライチェーンの寸断。これが同時に財政を圧迫している。
「財政規律」という言葉が同盟語になった日
財政規律という言葉は、ふだんはIMFの勧告文や国内の予算審議で使われる類の、どこか遠い話だ。ところが今回のG7声明では違う文脈で登場している。各国の財政赤字が「国内問題」から「同盟全体の信用リスク」へとスライドしている、という認識が共有されたらしい。
Bloombergが報じた声明の骨格はこうだった。
「G-7 Urges Fiscal Restraint in Face of War Shock to Economies」——戦争による経済的衝撃を前に、G7は財政規律を要求した。
ウクライナ支援で積み上がった債務がまだ処理しきれていない段階で、次の有事対応が始まった。加盟国の財政余力は想定より速く削られており、そこに利上げ環境が重なっている。借り入れコストが上がった状態で防衛費を積もうとすれば、社会保障や気候投資を削るしかない。会合ではその優先順位をどうつけるかで議論が錯綜したとみられる。
防衛費と国債コスト、どちらが先に限界を迎えるか
イラン紛争 経済影響という観点で見ると、直撃を受けているのはエネルギー輸入依存度の高い欧州と日本だ。原油・LNGの調達コスト増が貿易収支を悪化させ、それが通貨安圧力にもなる。財政規律 防衛費という二項対立は数字で考えると現実的な綱引きで、NATOの目標であるGDP比2%の防衛費を達成しようとすれば、多くの国でプライマリーバランスの改善目標と真っ向からぶつかる。
今回の会合で「即時要求」という強い表現が使われたのは、先送りの余裕がなくなってきたからじゃないか、という読み方もできる。ウクライナ支援のときは段階的な議論の時間があった。だが今回は地政学的緊張と財政悪化が同時進行しており、猶予が短い。
この先どうなる
G7財務相会合の声明が「要求」で終わるのか、数値目標を伴う枠組みに発展するのかで意味が大きく変わってくる。財政規律を拘束力のある形で共有しようとすれば、EUの財政ルールをどう扱うか、あるいは米国がどこまで協調するかという問題が浮上する。トランプ政権下でのG7協調は構造的に難しくなっており、声明の重みが実行を伴うかどうかは次の首脳会議までに見えてくるはずだ。イラン紛争 経済影響がさらに長期化すれば、G7内部での優先順位の違いが表面化するのは時間の問題かもしれない。