オーストラリアの燃料輸入が、同盟政治の地雷を踏んだ。Bloombergが2025年5月19日に報じたところによると、イラン戦争による中東ルートの供給混乱を受け、オーストラリア政府は戦略的競合国と位置づける中国から航空燃料を緊急調達した。精製燃料のほぼ全量を輸入に頼る国が、地政学的なタブーを飲み込まざるを得なかった格好だ。

国内精製ゼロに近い国が、なぜここまで脆くなったのか

オーストラリアは過去20年で国内の石油精製設備を次々と閉鎖してきた。採算が合わないという経済合理性に従った結果、今や精製燃料のほぼ全量を海外からの輸入で賄っている。平時であれば中東やアジアからのタンカー便で問題なく回るサプライチェーンだったが、ホルムズ海峡周辺の緊張が高まりペルシャ湾ルートに不確実性が生じると、途端に選択肢が消えた。

残った調達先が中国だった、というのが今回の話の核心らしい。AUKUS(米英豪安全保障協定)の一員として中国を名指しで牽制してきたキャンベラが、その中国から燃料を買う——この矛盾を、キャンベラは表向き「商業的判断」として処理したとみられている。

「Australia still sources the vast majority of its refined fuels from overseas.」(オーストラリアは今なお、精製燃料の大半を海外から調達している)— Bloomberg, 2025年5月19日

この一文が、問題の深さを端的に示している。有事の際に「大半を海外から」という状態のまま戦時経済に突入すれば、どこかで誰かに頭を下げなければならない局面が来る。今回がまさにその場面だった。

日本・韓国・台湾——インド太平洋同盟国が共有するリスク

イラン戦争 石油供給の混乱が示したのは、オーストラリアだけの問題じゃない。日本は石油の約90%を中東に依存し、韓国も同水準。台湾は島という地理的制約の上に、海峡封鎖リスクまで重なる。インド太平洋 エネルギー安全保障という言葉は政策文書で繰り返されてきたが、実態として備蓄日数や代替調達網は今も脆弱なままだ。

米国がシェール革命でエネルギー自給を達成した一方、同盟国側は依然として中東の石油に首根っこを押さえられている。その非対称性が、今回のオーストラリアのケースで可視化された。同盟の旗を振る側と、その旗の下で燃料を買い続けなければならない側——立場の差がじわりと広がっているのが気になるところだ。

この先どうなる

短期的には、オーストラリアは国内備蓄の積み増しと調達先の多角化(インド、東南アジア諸国)を加速させると予想される。すでに議会では国内精製能力の再建を求める声が上がっており、補助金スキームの議論が始まっているとも伝わる。ただし精製所の新設には数年単位の時間とコストがかかる。今すぐ解決する話ではない。

より大きな問題は、同盟国間でのエネルギー融通の枠組みが存在しないことだ。NATOには石油緊急融通の仕組みがあるが、クアッド(日米豪印)やAUKUSには対応する制度がまだない。イラン戦争 石油供給の混乱が長引けば、次に中国からの調達を「選ばざるを得ない」同盟国が出てくる可能性は十分ある。燃料を制する者が、同盟の足腰を制する——そんな局面が近づいているかもしれない。