チリ銅生産の2025年見通しが、静かに、しかし確実に下がった。世界最大の銅産出国チリで国営鉱山を束ねるコデルコが生産量目標を引き下げ、同時に銅の国際価格見通しを1ポンドあたり4.27ドルへと引き上げたとBloombergが報じた。「生産が減って価格が上がる」——この組み合わせは、銅を大量消費するEV産業や送電網整備にとって、じわじわ効いてくる重石になりそうだ。

コデルコの誤算——老朽化と操業トラブルが重なった

チリの銅生産を語るとき、コデルコは外せない。世界の銅生産量の約1割を単独で担う巨人だが、足元では鉱山の老朽化が深刻さを増している。主力鉱山の多くは掘り始めてから数十年が経過しており、品位(鉱石中の銅含有率)の低下が続いている。そこに操業トラブルが重なった格好だ。

銅価格見通しの引き上げは、供給側の厳しい現実を市場が織り込み始めているサインでもある。コデルコ自身がその数字を上方修正したという点が、ここでは引っかかるところ。「生産できないなら値段は上がる」と自ら認めているに等しい。

Chile Lowers Copper Production Outlook, Raises Price Forecasts — Bloomberg(2025年5月19日)

チリ国内ではコデルコ以外の民間鉱山でも似たような傾向があるらしく、国全体の生産能力が構造的に曲がり角を迎えているとの見方も出始めている。

グリーン移行が「銅不足」で足踏みするシナリオ

銅はEVのモーターや車載バッテリーの配線に大量に使われる。太陽光・風力発電の送電インフラにも欠かせないし、AIデータセンターの電力需要急増に対応するための送電網拡張にも銅が要る。脱炭素の速度を上げようとするほど、銅の消費量は増える構図になっている。

そこに今回のチリ発の供給下方修正が加わると、需給の綱引きはさらにタイトになる。米中それぞれが再生可能エネルギーへの投資を拡大している現状では、銅価格が1ポンド4.27ドルを超えて推移し続けるシナリオも現実味を帯びてくる。製造業のサプライチェーン担当者にとっては、コスト計算を見直す材料が一つ増えた、ということになりそうだ。

銅価格見通し2025の上方修正が単発のイベントで終わるのか、それとも長期的な供給制約の入り口なのか——そこが今、市場が最も気にしているポイントだろう。

この先どうなる

コデルコは鉱山の更新投資を進めているが、大型鉱山の開発から本格稼働まで通常10年以上かかる。短期間で穴を埋める手立ては限られており、2025年〜2026年の供給不足感は解消されにくい。一方、中国の景気動向が銅需要の上振れ・下振れを左右するため、需要側の変数も大きい。コンゴや南米の新規鉱山開発の進捗、そして米中の関税動向が、銅価格の次の節目を決める要素になりそうだ。チリの鉱山事情が世界のエネルギー転換カレンダーを動かす——そんな時代がもう来ている。