SpaceX IPOの主幹事行が、ゴールドマン・サックスに決まりそうだ。Bloombergが複数の関係者情報として伝えたもので、企業価値は3500億ドル(約52兆円)超と試算されている。これが実現すれば、近年で最大級の新規上場案件になりうる。サウジアラムコやAlibabaのIPOを思い起こせば、その規模感が伝わるんじゃないか。
3500億ドル超——SpaceXの企業価値はどこから来るのか
SpaceXの評価額を引き上げているのは、大きく2つの事業だ。ひとつは再使用型ロケット「ファルコン9」と「スターシップ」による打ち上げ事業。もうひとつが、低軌道衛星を6000機以上展開するスターリンク通信網。
スターリンク単体の加入者数はすでに数百万規模に達しており、ウクライナや紛争地帯での実用実績が「インフラとしての信頼性」を証明した形になっている。軍事・防衛分野との接点が深まるほど、契約の安定性も上がる。投資家にとっては、そこが魅力でもあり、同時に懸念点でもある。
「事情を知る複数の関係者によると、ゴールドマン・サックスがSpaceXの待望の新規株式公開において、銀行団の主幹事を務める見通しであることが明らかになった」(Bloomberg)
ゴールドマン・サックスが主幹事を担うとなれば、機関投資家へのロードショーや株価設定のプロセスに同社の信用力がそのまま乗っかる。それだけ案件の信頼度が市場に伝わりやすい。
上場で得た資金が「地球低軌道の独占」を加速させるリスク
ただ、手放しで歓迎できる話でもない。IPOで数百億ドル規模の資金調達が可能になれば、スターリンク網の拡充スピードは一段と上がる。軌道上の周波数帯や「衛星スロット」は有限で、先に展開した事業者が事実上の優位を握る仕組みになっている。
欧州やアジアの通信事業者、あるいは各国政府が危機感を持ち始めているのも、ここが理由だ。一民間企業が通信インフラの制高点を握るシナリオは、かつては絵空事だったが、スターリンクの現状を見れば笑い飛ばせない話になってきた。
規制面でいえば、米SECが宇宙インフラ企業の上場審査をどう扱うかも未定の部分が多い。イーロン・マスクと政府当局との関係——DOGEを通じた政府関与、トランプ政権との距離感——が、審査プロセスに何らかの影響を与えるかどうか、投資家側もまだ読みきれていないらしい。
この先どうなる
今後の焦点は3つ。①ゴールドマン・サックス主幹事の正式発表と共同主幹事行の顔ぶれ、②スターリンク事業を切り出して別途上場させるかどうかの判断、③IPO価格設定に際して企業価値3500億ドルという水準を市場がどう評価するか。マスク本人はIPOに慎重な姿勢を繰り返し示してきた経緯もあり、「発表→延期」のパターンに入らないとも限らない。宇宙株上場の歴史的瞬間が本当に来るのか、2025年後半の動向から目が離せない。